日頃は大変ご無沙汰いたしております。皆様にはお変わりないことと存じます。私も相変わらず、締め切りに追われる日々で、人物史の発掘に努めております。
週刊「日経ヴェリタス」オンラインの「相場師列伝」は「日経金融新聞」時代から通算すると、5年間で230人を超えてきました。日経から「もういいよ」といわれるまでは続けようと思っています。モーニングスター・株式新聞の「アマチュア相場師列伝」(月1回)はようやく30人を数える段階ですが、MKニュース社の月刊「FUTURES」で「実録・相場師」が始まり、これは私にとっては初めての長尺物の連載で、いずれは本にしたいと思っています。
連載ものの一方で書き下ろし原稿も少しずつですが毎日続けています。三菱財閥の開祖岩崎弥太郎の伝記「海上王憤怒の生涯」(仮)の資料収集、取材、執筆は7合目から8合目に差し掛かっております。文字数で14万字を超えてきました。また希代の相場師兼経営者本田忠氏の伝記「マムシの本忠一吉原軍団が行く」(仮)は大詰めを迎えており、来春の完成を目指しています。2年前に高知新聞社から出版し、高知県出版文化賞を受賞した「幸徳秋水と小泉三申一叛骨の友情譜」の続編にあたる「反骨のジャーナリスト中島及と幸徳秋水」は近く高知新聞社からブックレットの形で出版の予定です。
さて、このたび上梓しました「一攫千金物語一日本相場師群像」は、ここ数年間に種々の媒体に書いてきた、相場師や取引所リーダーのエピソードを中心にした読み物、先物業界に関する雑感等をまとめたもので、これらを束ねるキーワードとして「一攫千金」と命名しました。投資日報社の「商品先物市場」、東京工業品取引所・東京穀物商品取引所・中部大阪商品取引所協賛の季刊「メリット」、日本商品先物振興協会の会報「JCFIAマンスリー」を中心に執筆してきた原稿を加筆、修正したものです。
それぞれの原稿の成り立ちについては本書の「あとがき」に詳しく書きましたので重複を避けますが、上記の「商品先物市場」も「JCFIAマンスリー」も休刊に追い込まれてしまいました。商品取引所法改正に伴う営業行為規制によって商品先物業界は今存亡の岐路に立たされています。まさに崖っ縁です。
だが、先物市場は「罵倒と受難」の歴史を背負いながら500年に及ぶ逞しい歩みを続けてきました。決して声高に存在理由を並べ立てなくてもブルージュの豪商や大阪商人の生み出した先物取引というシステムはそんなに“やわい”ものではありません。公設市場を潰せば、「虎市」と称するヤミ市場を生むまでです。投機市場の興亡は国民の元気度と比例するといわれます。人々の投機心が萎えた時、先物市場は衰微します。投機心とは一攫千金を願う心です。古来道学者によって蛇蝎のように忌み嫌われてきましたが、万古不易の、人間の哀しい性なのです。彼のJ・M・ケインズも言っています。「人生は短い。人は早い結果を欲している」。先物市場は不滅です。