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総合取引所構想
福島 恒雄
昨秋、ロンドン金属取引所(LME)が同所買収オファーの存在を認めた、との報道があった。情報がなく、その後の動きは不明だが、新聞報道では、「ついに来たか」と「LMEだけは別」という意見に分かれていると言われる。頑なに伝統を守り続け、格式を重んずる英国らしさからいって、私としても「LMEだけは別」といいたいところだが、どうなることやら。
一方、日本政府は、証券、金融、穀物、工業品などを総合的に取り扱う総合取引所法案を今度の国会に提出するという。これは、証券、商品の垣根を越えた総合取引所という世界的な流れを受け、一昨年6月策定の新成長戦略の「金融分野」の目玉として打ち出されたものとのこと。
総合取引所構想は、欧米、アジアでは韓国、シンガポールで先行しているが、先行した韓国、シンガポールでは、金融デリバティプが栄え、コモディティー部門は捗捗しくない状況になっていると聞く。先物市場がデリバティブと名を変え、金融市場化し、受渡しという現部流通との接点をないがしろにしてしまったことで、商品が金融に埋没してしまったからではないかと思う。
報道によれば、東証と大証の統合で発足する日本取引所グループに、別個にある取引所それぞれが同グループに入るという構想のようだが、清算機関など別個に存在する関係団体なども統合していく方針という。監督規制主体は金融庁に一元化し、現物市場に影響が出る場合には関係官庁である農水省、経産省と協議することになり、さらに、コメなどの一部商品は現行主務省の所管とすることも想定の枠内にあるようだ。つまり、金融商品取引法と商品先物取引法が併存しながら、商品取引所が金融、証券取引所の傘下に入ることにより総合取引所が出来上がり、総合取引所の監督、規制権限は金融庁に一元化される、という構造だ。いいかえれば、金融庁としては、総合取引所が世界の潮流というなら、うちの傘下に来たければ来てもいいよ、門は開けたよ法案ということになる。
この法案に対する当業界の対応方針については不明だが、商品先物市場の根底には商品流通という実経済があり、あくまで金融市場とは異なる使命と責務を負い、存在価値があることを念頭におかなければ、韓国、シンガポールの二の舞になりかねない。金融市場にはない独自性とそのオリジナリティーに対する自負心をもって対応し、決断したいものである。
実際、コスト削減的なアプローチもあろうし、資金力、財務基準の問題もあるだろう。なかなか難しい判断を迫られる局面が訪れることになろうが、これまでの営業手法へのこだわりや勧誘規制を中心に据えての議論はするべきではない。商品業界へのアプローチに、金融庁は「投資家保護」を第一の課題として持ち出す傾向にあることは商品ファンドで経験しており、本件の場合も、営業手法や勧誘規制にこだわると金融庁の描く図面、ドグマに引きずり込まれ、埋もれてしまい、財務要件等一層厳しい状況が跳ね返ってくることが予想され注意を要しよう。一部には未だ過去の成功体験に引きずられた議論もあるにはあるが、おおよそ当業界の営業手法に対する業界人意識と体制は、ここのところ見違えるように変わってきている。身から出た錆と言えばそれまでだが、商品先物市場の社会的地位は低く、信用は薄い。だからと言って、金融業界の一員になることでその状況が大きく好転するわけでもあるまい。ましてや商品先物取引という制度、システムそれ自体に難があったわけではなく、社会的評価はあくまで、消費者保護団体から目の敵にされるような営業形態の問題であって、それにより身の丈を超えた出来高を享受できた取引所が後押しした結果ではないか。現物流通に根差した商品先物市場の確立こそが、過去から、そしてこれからも当業界が目指すべきものであり、総合取引所構想に対する切り札になり得るものと思う。先物市場で形成される価格が現物流通に如何に結びついているか、という原点に立ち返り、当業界が追求しなければならない社会的使命と、存在理由を、今回の金融庁による総合取引所構想への対処方針の根幹に据えるべきと思っている。 |