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貿易の自由化とリスクカバ−
沼野 龍男
世界の先進国ではGDPに占める割合が小さくても、農業の育成保護のために膨大な補助金を払っていることが知られている。例えばフランスの小麦、ドイツの甜菜、米国のコーンや綿花に対するものが有名だ。日本が一定量の輸入を認めているカリフォルニア米にも相当な補助金が支払われている。関税の問題を解決しても、各国がそれぞれ事情に応じて支払う補助金つき農作物の輸出入価格差はどう調整するのか。それも自由競争だから仕方ないのか。
米国のオバマ大統領は追いつめられて、対外販売を3〜5倍にすると公言する一方で、国内消費は「パイ・アメリカン」を徹底させよと言っている。FTAもTPPもその為の手立てに過ぎないのではないか。日本は、国内消費が落ち込んでいるのに、TPPでさらに安い外国製品が売れ、自国製品が売れ残ることになる。東北の復興事業が本格化しても、国内の業者や労働力が活用されるより、海外から質の低い技術やサービスが入ってきて国民の血税から捻出した予算を使うことになりはしないか。かつてイラクに派遣された自衛隊関係者は、アメリカ資本の治水・建設業者の下請け達の低質な仕事振りに驚いたと報じられた。
筆者は今更TPP参加の是非を問うつもりはない。円高で海外から安い商品が手に入ることに加えて、関税の撤廃で更に物品の価値がさがり、給料が上がらずとも相対的に金の余裕ができ、金が滞るようになる。金めぐりが悪くなり物を売ろうとする人が増えて、更に物の価値が下がる。デフレが続くと金の価値が上がるから、借金してまで事業を拡大する意欲はなくなる。すなわち、TPPに参加すると間違いなくデフレは加速することになろう。
それを十分承知の上で野田総理はTPP参加と消費増税をにわかに公言し始めた。まさかとは思うが筆者は勘ぐる。
例えば、海外から仕入れた商品を今1000円で売っているとする。5%の消費税込みで1050円となる。これがTPP参加効果で950円で売ることが出来るとすると、10%の消費税込みでも1045円となり、まだ5円の割安感が残る。デフレを消費増税で相殺するなど姑息極まりない。
TPP参加予定国のGDPを見ると、米国が全体の約67%、日本が24%、オーストラリアが4%、他7ヵ国で残り5%、日米で90%に相当する。日本が参加しないTPPは全く意味をなさない。何故、米国は日本を引き込もうとするのか。日本人の勤勉さがいち早く戦後を復興させ、GDPで米国に次ぐ迄に成長した。世界の手本になる様な経済的、社会的、文化的果実を沢山実らせた。それを米国が手を変え品を変え取り込もうとしてきた。120兆円を超す簡保資産、45兆円を超すJA共済などは米国保険業界にとっては垂涎の的。さらに、先進国で最も進んでいるといわれる医療制度や国公立大学制度がつづくターゲットになるだろう。
国民1人1人が「YES」か「NO」かを明確にしなければならない状況が頓に増えている。職場で、地域社会や国政において、あいまいな態度は棄権と同じだ。不作為が積もり積もって取り返しのつかない罪を作ることになる。国民のレベルを上げなければ為政者のレベルは上がらない。それは歴史が証明している。
貿易が自由化すればする程必然的に発生するリスクをカバーする上で、公正で透明な先物取引システムの存在は必要不可欠ではないか。にもかかわらず、それに携わる先物取引業界は危急存亡の瀬戸際にある。何をすべきかはっきりしている。決して諦めないで、行動しようではないか。 |