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結局、農業革命しかない
沼野 龍男
 TPPの議論に相前後して、「USTR」なる名称が頻繁に登場している。マスコミの多くは「米通商代表部」と訳しているが、組織を示すのではなく、「カータ代表」の如く個人を表すのが正しいようだ。
 表向きは米大統領補佐官的位置づけだが、米国独占資本との緊密なコネをバックに、外交・通商交渉での最強の尖兵として暗躍している。
 CBOT理事長にもなったヤイターは、米国にとって不利益な貿易障壁を打破する攻撃部隊として、「鉄鋼交渉」、「ウルグアイラウンド」、「日米半導体協議」などでユニタリズム(アメリカの一方的支配)を定着させたことで有名。
 ヒルズは日本の目に早えない「構造的障壁」、すなわち、流通や取引の慣行、政府の土地改革、税制などに焦点をあて、スーパー301条の脅しを絡めて目的を遂げようとしたことで名をあげた。
 カンターはウルグアイラウンドやMAFTA(北米自由貿易協定)に力を発揮した。ウルグアイラウンドでは、通商交渉に加えて、「サービス」、「知的財産権」、「投資協定」を新たに加えた。
 カンターの日本叩きが激しくなるにつれて、対ドルで円高になっていった。
 彼らはアメリカ国家の為というよりは、主たる交渉相手である日本などに、米独占資本と自らの実力を嫌という程知らしめて、代表辞任後は交渉相手国と米国とのロビイストとして、高額な報酬を得て働いているとのこと。USTRが組織というより個人である所以でもある。
 米軍がかつてイラクの病院、橋、水道施設を爆撃で入念に破壊した後、今度は米国の企業が復興事業から利益を貪ろうとしている。狙いは、水道事業や生活必需サービス事業支配にある。元通商代表の名が見え隠れする。
 いったい何のための戦争だったのか。USTRは日本の医療分野における障壁も指摘している。三分野(牛肉、郵政、自動車)に限らず協議する米国のスタンスは明白だ。
 過去、会計基準や建築基準、会社法等米国スタンダードの押しつけ実績は数え切れない。
 自動車の対米関税は2.5%。アメリカでの日本車の販売台数の約3分の2は米国内で組み立てたもので、日本からの純輸出は3分の1相当と云われている。関税が撤廃されても、為替が78円台から2円円高になればチャラである。
 コメの日本の関税は最大778%といわれている。現状10kg5000円のカリフォルニア産米は計算上は約570円になる。はたして日本人の口にあうのだろうか。コンビニのおにぎりは冷めていても旨い。それ程良いコメを使っているからだ。
 横浜中華街のチャーハン名人と称される料理人曰く、「日本のコメが旨いから焼飯が旨くて当然だ。自分は生玉子をかけただけのご飯が一番だ」と。
 うまいコメ─福島の稲作名人のコメ─を5kg565円で高島屋が販売する。渋谷のあるスーパーでは山形産「つや姫」5kgが新潟産コシヒカリの2690円より高い2990円で売られていた。(10月31日付朝日新聞)
 福井県の「JA越前たけふ」は米の販売や肥料、農薬の購買などの経済事業を上部団体の「経済連」を通さず、独自出費の子会社を直接手がけることに。(11月2日付朝日新聞)
 国内の農家は、品質には自信があるが、コスト高を憂えている。農機具や肥料高、生産品の流通経路が複雑で中間マージンが高い。減反をやめ、海外輸出に目を向けるべきだと考えている人も少なくない。価格が少々高くても良質のコメを求める中国、インド、オーストラリア等の需要は大きい。
 産地、品種、品質の違いで適正な格差をつけ、生産者、流通業者、消費者が納得する最大公約数的指標を時々刻々形成する「先物市場」に委ねるのが、不条理な圧力を排除する上でも必要ではないか。
 先物市場の本来的機能が達せられるためには、まず「市場の流動性」を確保することと、「JAが旧態を全破壊」して革新することが焦眉の急。

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