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異常気象のTPP
杉江 雅彦
 このところTPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加に関して国内でも賛否を二分する議論が続いている。
 TPPへの参加がわが国の将来に重大な影響を及ぼすことは十分に承知しているつもりだが、同じ環太平洋でも気象の変化がもたらす大きな影響についても、関係国でもっと関心を持ってお互いに議論し、対応策を共有してもよいのではないか。それがエルニーニョとラニーニャの問題である。
 昨年夏から今年の春にかけて起きたラニーニャは、米国では乾燥した天候がトウモロコシや小麦などの穀物の収穫を減少させ、またブラジルやオーストラリアでは反対に豪雨で鉱山や農業に大きな被害をもたらした。その影響で多くの農産物や鉱物資源の価格が急騰したことは、まだ私たちの記憶に新しい。
 ここでエルニーニョとラニーニャについてかんたんな解説をしておくと、まずエルニーニョは東太平洋の熱帯圏、地理的にいえば南米ペルー沖の海面温度が、数年おきにセ氏2〜3度上昇する現象を指す。もともとはペルー沿岸の漁師たちが毎年12月になって海温が上昇する現象を、同じ12月に生まれた神の子イエスキリストにちなんでエルニーニョ(男の子)と呼んだことにはじまる。海温が上昇すると鰯が豊漁となるため、それがイエス(神の子)のおかげだと考えたからだ。ところが数年に一度はこの高温現象が翌年春まで続くことがあり、気象学者はこれをエルニーニョ現象と呼ぶようになった。
 この現象とは反対に、やはり数年おきにこの海域の水温が1度ほど下がったまま長期間居座る現象が確認された。これがラニーニャである。はじめはこの現象をアンチ・エルニーニョと呼んだが、これではイエスキリストに反対すると誤解されかねないため、女の子を意味するラニーニャと呼び変えたといわれる(町家康『世界史を変えた異常気象』による)。
 エルニーニョもラニーニャも、ともに異常気象によって各地に異なった形で甚大な被害をもたらすことが問題である。ある地域では干魃になったと思うと、また別の地域では大雨をもたらす。いずれも気圧や風の変化、あるいは海流の変化の仕業である。
 ところで、ようやくラニーニャが終息してホッとしたところへ、またまたラニーニャが戻ってくるという予報が、気象関係機関から相次いで発表された。たとえばタイに大洪水をもたらしたインドシナ半島の長雨も、ラニーニャによってインド洋東部の海温が高くなったためだといわれている。この現象はいったん低海温域が西に移動しているものの、秋になって再び東に移動したため起こった“ラニーニャ”もどきだという説もある。
 もしこの冬からラニーニャが再び発生すると、前回と同様に広い地域で農産物中心に減収となる可能性が高く、その時期が在庫減少期と重なれば思わぬ価格急騰を招く。

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