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コメと個人投資家
福島 恒雄
 出来高という一点で全く同方向を向いていた取引所と業者の立ち位置が、最近、投資家の視点から見つめ直すことにより乖離し始めていることは以前に触れた。取引所は、定率会費という収入で成り立っており、定率会費は出来高、つまり成立した取引を係数にするのであるから、出来高を増やすことが取引所の至上命題となる。一方、業者も長くこの出来高が収入源である手数料の係なっていたことから、手数料収入を増大させるために出来高を増やすことが経営上の至上命題となっていたが、直近の法改正で、不招請勧誘の禁止が導入されたことから、その高度化、先鋭化した新規開拓スキルを発揮する場が失われ、委託者、顧客のニーズを再考することで出来高の呪縛が解かれ、取引所と業者は運命共同体ではなくなった。
 不招請勧誘の禁止導入に至る経緯については是非もないが、その結果としての現状から、主務省、取引所は、日本の商品市場の金融市場化と、商品市場からの個人投資家、あるいは小規模投資家を排除する方向に動いているように思われてならない。
 取引所は取引仕法や制度を国際標準にし、アルゴリズム取引やHFTの参入促進を図っているが、これは不招請勧誘禁止により減退する個人投機資金の参入に代替するものとして海外投機資金を捉えているからだろう。試験上場されたコメに対する動きを見ても、「国際市場」という不思議なスローガンを掲げられていることも、この個人投資家排除の意識がはたらいているからではないかと思われる。
 TPP問題で価格競争力とか関税とか議論噴出だが、そもそも日本のコメは、生産も流通も消費も日本国内独自の、特異な商品であって、断じて国際商品ではない。国際商品ではない商品の市場が国際市場になり得るのかはなはだ疑問だが、これも国内の小規模投資家の排除があり、国外投機資金の参入促進が念頭にあるからこその発想ではないか。
 コメ市場において受渡しがあったようだが、今回の受渡しを好意的に受け止めているのは業者サイドのみのように見える。町のお米屋さんには必ずヘッジニーズがあるはずで、そのニーズの開発がなぜ積極的に展開されないのか。少なくとも不招請勧誘禁止条項が適用されない取引所が、町のお米屋さん向けのセミナーを開催するなり、パンフレット、チラシの類を使って営業し、ヘッジニーズを喚起するぐらいのことをしてもいいと思うが、これも動きが鈍い。
 日本の商品先物市場は、これまで個人投資家により支えられてきた。それがファンドという形に変わろうとその根源に存在する出資者は個人投資家で、今後も個人投資家が市場を支える存在であることに変わりはない。コメという業界の悲願である商品が上場されたにもかかわらず、あまりにも静かな今の状況の背景には、どうも、商品市場の金融市場化と個人投資家の排除という意識があるように思うのだが、勘ぐりすぎだろうか。

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