東穀協会=コメ市場振興へ始動
東京穀物商品取引所のコメ先物取引は10月21日に6限月が揃い、11月から受渡しも可能になる。とはいえ、その出来高は21日以後も依然低迷している。このため東穀協会(二家勝明会長)は24日の会員代表者懇談会で、コメ先物市場振興に取り組むことを全会一致で決めた。東穀取と同協会は、9月23日に東穀取の経営状況と今後の方向性について協議、その上で10月5日に開かれた同協会役員会でコメを中心にした農産物市場の取引振興について話し合われ、今回の決議となった。同協会では今後、年内をめどに営業者担当会議で実行案を討議していくとしている。
(益永研)
取引所と取引員の協力が不可欠
「何よりも、72年ぶりのコメ上場として社会的に話題になったコメ先物取引の試験上場が失敗に終わり、本上場に至らなかった場合、社会的にどう見られるのか、先物市場へのインパクトがどのような形で表れるのかを、業界全体で考えなければならない。協会として、現状を傍観することは出来ない。まずは出来る範囲の協力をする必要があると会員も理解してくれた」。
今回の同協会のコメ先物市場振興決議について、東穀協会の二家会長は27日、本紙取材に対してこう語った。
現在のコメ先物市場低迷の背景には、取引所統合問題や当業者の反対など幾つもの要因がある。取引所は、当業者への先物取引の啓蒙、個人投資家へのイベントやセミナーによるマーケティングなど、精力的に動いているものの、肝心の当業者参加については「一度は口座を開いた当業者でも、当業者間の締め付けなどがあって、取引出来ないというケースも少なくない」(大手取引員)など、依然ハードルを越えられずにいる。
また、個人投資家を対象とする取引員の営業現場でも、ただでさえ不招請勧禁止のために勧誘が制限されている中で、「コメは、すこしでも委託者トラブルがあれば大きく叩かれる可能性がある。それよりも、すでに熟知している他商品の営業に傾きがち」(同)という声も少なくない。
とはいえ、東穀取の出来高低迷がこのまま続けば、再び株主から資産価値毀損等、財務的な理由から他市場への移管を求める声が再燃する可能性もある。仮にそうなっても、農水省のこれまでの姿勢をみれば、コメの移管は認められないだろうし、コメ以外の商品だけの移管もどうなるか分らない。最悪の場合、東穀取農産物市場自体が無くなる可能性もないではない。
コメ上場時の内外メディアなどでの話題性の高さや、目下の東穀取の出来高などを考えれば、このままコメが消えてしまっては、他の農産物市場にも悪影響が及ぶのは目に見えているからだ。
だが、どんな話題でも、話題は話題。災い転じて福ということはある。
現在は世界最大の取引所となった米シカゴのCMEには、世界初の通貨先物上場の際、当時CME理事長だったレオ・メラメッド氏が自らフロアーに降りて、「ファンダメンタルズが分らなくても、とにかく買え、とにかく売れ」と取引所の会員であり、自己取引で稼ぐ個人トレーダーたちの背中を叩いて回ったという逸話がある。
当時のCMEの上場商品は牛や豚、牛乳などで、取引規模も小さく、金融業界からは「商品業者に通貨が取引出来るものか」と厳しく批判されたり、揶揄されてもいたが、取引所の熱意と、それに応えた会員たちの働きで、まずは予想以上の取引高を積み上げることができた。結果的に、その通貨先物の成功によって、米国における商品先物市場の地位は一躍高まり、CME自身も年間30億枚近い取引高にまで拡大した。
コメについては、統合の話題が先行した結果、取引所と取引員の間に距離感が生じたともいわれるが、「まずはそうした経緯を横に置き、取引所と取引員が一体となって、コメ市場の活性化に尽力するしかない」と、二家会長は語るのである。
幸い、コメは10月中に6限月が出揃い、11月には受渡しも可能になる。
市場が完備したところで、まずは取引員が自己取引を含めて、流動性担保のためにどれだけ協力出来るのか、その底力を見せてくれることに期待したい。 |