平成23年10月17日(月)(毎週月曜日発行)第1109号
      発行所 有限会社 先物ジャーナル社
      発行・編集人 高橋 伸幸
〒103-0013 東京都中央区日本橋富沢町11−15−702
TEL 03-3668-3450 FAX 03-3664-9275
購読料・月2,310円 年27,300円(税込み


日本テクノシステム


 
平成23年年度・折り返しの課題 システム投資、コメ先物振興に異議続出
◇"めにの目" 食料品向う数年、高価格続く 国連農業関連3機関の報告書
◇"先物寸言" 公正な価格形成(下)
◆"アングル”
 ・ゴールド・バグ(金の熱狂者)ご用心
 ・移り変わる力が金価格を形成する
 ・金のdemise(死去)はあまりに誇張され過ぎ


平成23年年度・折り返しの課題
システム投資、コメ先物振興に異議続出
  
 今年8月、商品先物市場は活況に沸いた。しかし、9月は連休が続いたことや、金価格の下落による委託者資産減少もあって再び沈滞ムードが漂い始めている。年度の折り返し点を迎えた中、商品先物関係者たちから見た年末にかけての取引所と業者の課題を聞いた。
(益永研)
 課題1 東工取のシステム投資
 東京工業品取引所が5年契約で現在のシステムを導入してからおよそ3年。来年初めにも、再び新たなシステム導入の検討が始まると見られている。
 商品先物業界関係者たちの多くが今、その新システム導入について語るのは、まず、「今回は余計な費用をかけないで欲しい」(商品先物会社役員)ということだ。
 ある先物会社関係者が言う。
 「業者は、リストラに次ぐリストラ。退職者の中には今も再就職出来ずにいる者も数多い。そんな中で、役人も取引所の役職者も、自分たちだけは必要な給料と退職金は貰っている。ギリシャの公務員と一緒だ。システムについても、黙っていればまた、何10億円というカネをシステム会社に支払うことになるのではないかと心配だ」。
 東工取が前回、OMXを初めて導入した時には、勧誘規制が厳しくなる中で将来的な不安はありながらも、一方で証券取引所との統合、あるいは海外や他業界からのプロトレーダー参入といったシナリオも示されたため、5年間でおよそ90億円かかるといわれた最先端システム導入にも断固とした反対は聞かれなかった。今回は予算の段階から厳しい声が出そうだ。
 「取引所も、現在は株式会社であり、会員組織であった頃に比べ、収益性を強く意識した運営をしている」と、ある取引所関係者は語る。「だからシステム導入についても経営感覚をもったものにしていかなければならないと理解している」とも言う。まさに、そうした意識をもって新システムについても考えていってもらいたいものだ。一方ではまた、「海外のシステムを使い続けるとなれば、コミュニケーションの問題もあり、国内のシステム会社の手助けが必要。それなりの経費はかかる」(取引所関係者)という参加者の利便性についての問題もある。そうした理由も認めた上で、それでもなお「可能な限り、費用を削ることを望む」(先物業者)は今後、ますます高まるに違いない。
 システムについては、先日、日本商品先物振興協会から「板合わせシステム」
に関する要望書が出されたが、流動性をどう図るかは、システム開発上今後もつきまとう課題でもある。
 また、「コンマ何秒を競うシステムは、これ以上は必要ない」(プロップ・トレーダーという声もある。過去10年、世界中でストレスのない取引速度を競ってステム開発が求められてきたが、それがアルゴリズム・トレーダーなどを中心に膨大な量の発注を競うトレードにつながり、海外市場でも今、システム負荷の過剰などを理由に逆に発注そのものが制限されるという動きもある。「市場規模や参加者の性質に見合ったシステムの見直しも必要だ」という声にも一理ある。いずれにせよ、来年度に本格化する東工取の新システムの検討については、従来にも増して市場参加者の声を聞く姿勢が求められよう。

 課題2 東穀取コメ先物の始めの一歩
 鳴り物入りで上場されたコメが、上場2ヵ月目にして出来高月間9350枚と1万枚にも満たないとは誰が予想しただろうか。ある商品先物会社の外務員が言う。
 「東穀取は好きだったが、東工取との統合白紙撤回に失望した。コメについても会社からはしっかり営業しろといわれているが、今の市場規模では怖くて既存客にも薦められない」。
 東穀取のコメ市場規模が拡大しない理由は他にも、「準備不足」や「材料不足」、「現物市場の値段が見えない」といった声が聞かれるのだが、何よりも今年7月の農水省の突然の「心変わり」に対する心理的な抵抗感がいまだに現場の外務員に残っていると思わせられるコメントではある。
 一番の問題は、そこまでして取引所運営にこだわった主務省に今、「コメ先物を本当に育成する気があるのか?」(同上外務員)という疑問の声か多いことだ。「農水省の焦土作戦」(JAのメディア)、あるいは「このままの出来高状況が続けば、東穀取は年間約7億円の赤字で、3年ほどで経営破たん。それでも権限を抱え込むことを優先した」(商品業界メディア)など、とても監督官庁に対するものとは思えないような批判が見られることも、こうした疑問を深める要因となっている。
 「焦土作戦」云々は別にして、仮に農水省が、こうした疑問を払しょくしたい、あるいはせっかくスタートさせたコメ先物市場の成功を少しでも後押ししたいと考えているのであれば今後は、農水省自身が「コメ先物」について、どこかで積極的姿勢を示す必要があるだろう。それが、コメ先物市場の振興の始めの一歩になるはずだ。
 「コメで顧客トラブルを起こしたり、変な値段でもつけたら、反対している生産者団体やマスコミなどから糾弾されるのは目に見えている。投機商品として積極的に営業することに抵抗がある」(同上外務員)など、「営業面での厳しさ」を指摘する声も確かにある。しかし、取引所だけでなく、主務省もまた前向きだと分れば、営業現場も改めてヤル気になるに違いない。
 幸い、10月には福島県のコメも販売が認められた。とはいえ、一方で、「ウォール・ストリート・ジャーナル」(10月7日号)に「日本が安全なコメ探し」とのタイトル付きで兵庫県の米穀店の話として「米国産の有機米のネットでの注文が急増している」などの記事が出たり、他のマスメディアでも、TPP問題に絡んで、コメ農家の厳しさが取り上げられるなど、わが国のコメを取り巻く環境は明らかに変わりつつある。話題には事欠かないはずだ。
 商品先物会社の中には、コメ上場以前、「もし上場されたら、委託者をコメ農家の現地視察に招待して、日本のコメに対する理解を皆で深めよう」、あるいは、「受渡し後、海外へ転売することも考えよう」といった声もあった。幸い、コメ先物については今も、「流通業者、個人投資家からの問い合わせは結構ある」(商品会社)という声も聞かれる。
 市場の流動性を確保するために、各業者に自己取引も呼び掛ける。振興策も、新規商品については当然であり、それは今後も続けるべきだろう。また、コメ価格についての詳細情報をどれだけ発信できるかも問われている。
 注意しなければならないのは、売買の中身が単なるパイカイだけで終わらないことである。例え1枚づつでも、自己ディーリングができる市場作りとは何か、水面下でもがくコメ先物市場だからこそ、いろいろな市場振興策を試してみる価値がある。
 (2011年10月17日―第1109号)
              

inserted by FC2 system