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公正な価格形成(上)
福島 恒雄
今回の稿はちょつと小難しい言い回しになるがお許しを願いたい。
商品取引所、先物市場には、公正な価格形成と価格の時間的空間的平準化、そしてヘッジという機能があり、これを取引所の三大機能というのは当業界の人間なら誰でもご存じのはずだ。近年、取引所が新規商品を上場しようとするとき、生産、流通段階における価格の保険つなぎ、つまりへッジ機能がビジネスに直結し、具体的な利用方法として説明しやすいことから、どうしてもヘッジ機能が大きく取り上げられる傾向があるのはいたしかたないが、残る二つの機能も取引所がその土俵を守る上で忘れてはならない機能であり、これを念頭に置かなければ取引所の存在意義自体が危ういものとなる。
公正な価格形成は、市場に需要と供給、あるいは売りと買いという形で数多の情報が集約され、価格が形成されることで実現される。市場は、価格形成自体を公正にすることこそが使命であるから、取引参加者に一定の規制をかけざるを得ず、その意味で、逆説的だが完全な自由市場は存在し得ないことになるのだが、かの山種が、「結局は市場に聞くしかない」といったのも、政治家や学者が「それはマーケットが決めること」というのも、市場が設定した土俵は公正であり、公正な土俵で価格が形成されていることを前提としていることになる。
公正な条件設定とはなにか。誰もが、一定の条件をクリアすれば参入できる土俵でなければならず、その一定の条件は平等に適用されるものでなければならない。これまで何度も指摘してきたことだが、その意味で、クリアリングシステムにより日々値洗いする直接市場参加者とそうでない者、つまり市場の外にいる、機関投資家や個人投資家を含むいわゆる委託者には市場に参加する場合の条件が変わってくることは当然で、このことが参入条件の平等性に欠けることにはならない。
資金力ということでは、仕手戦が想起されるが、仕手戦とは結局のところ売り惜しみと買占めの戦いであり、これも実際の現物流通との接点となる受渡しを考えれば、最終的には資金力だけでなく、実際の需要と供給に集約し、拘束されるのであるから、その意味で、商品先物市場は金融商品市場と全く異なる存在であり、資金力にのみに左右される市場ではない。
証券市場で、インサイダー取引なるものが刑事罰の対象となっており、金融商品取引法に右へならえして商品先物取引法にも導入されたが、あらゆる情報がネット回線を通じて世界を駆け巡る情報社会において、全ての需要と供給の情報がオープンにならざるを得ない商品先物市場では、インサイダー取引の適用は証券市場ほど単純、簡単なものではなく、運用は相当難しいことになる。金融商品市場はあくまで金融市場であって、結局は資金力と内部情報の入手が大きな効果を生むが、商品市場は現実の需要と供給に行き着くことになるのであって、受渡しを中心に据えることで、商品市場の方が、完全とはいえないまでも、公正な価格を形成する市場足り得るのである。
(つづく) |