平成23年月12日(月)(毎週月曜日発行)第1104号
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日本テクノシステム


 
東工取金先物市場
  売買期待と発注制限の矛盾 業界内の足の引っ張り合いはやめよ
◇"先物寸言" 相場師ほど素敵な商売はない
◆"先物文化"現代文明と同期現象
◆"アングル”
 ・リビアの石油生産回復は来年遅く─国営石油会社のニューチーフ
 ・金、スイスフランに応じて急落


東工取金先物市場
売買期待と発注制限の矛盾 業界内の足の引っ張り合いはやめよ
  
 9月に入り、東京工業品取引所で取引する大手プロップ・トレーダーたちが「売買を手控え始めている」という。その背景には、同取引所が8月に国内大手プロップ・トレーディング会社各社に対して通知した「発注制限」がある。同様の意向は海外のアルゴ・トレーダーたちにも及び、今後、海外玉の減少も心配されている。(益永 研)
  
 管理が過ぎれば、他市場に移るトレーダーも
 同取引所は今年度の事業計画に内外プロップハウスへの営業強化を掲げている。また過去数年間、世界のISVとの接続、システムのスピードアップなどを急いで内外からのプロップ玉の導入に力も注いできた。それが、今なぜ「発注制限」なのか。
 8月中旬、東工取を中心に取引する複数のプロップ・トレーディング関係者に、東工取から電話が入った。「発注枚数が当社が定める内規に比べて異常レベルに達している。ついては発注制限を要請する」といった内容だった。
 これに対して、電話を受けたプロップ関係者たちから聞かれたのは共通して、「今頃、なぜ?という疑問だった。
 「当社は市場会員でもあるので、建玉制限は3万6千枚。むろん建玉制限には引っかかっていない」、あるいは「幅広い価格帯に大量のオーダーがあることに操作疑惑があるといわれても、複数のトレーダーたちが複数の手法で売買する以上、異なる価格帯で多数の注文が生まれたり、成立しなかった注文をキャンセルするのはやむを得ないこと」など、当初はそれぞれに反発はしたものの、最終的にこれらプロップ関係者たちは取引所の意向を汲み、自重することに同意したという。
 ただ、その代わりに、「これまでの取引の半分を、ニューヨーク金に移す」(あるプロップ関係者)など、一部には東工取離れともいえる動きも見られ始めてる。「それでなくても、市場拡大が望まれる時に、これでいいのだろうか」という声が出るのは当然だ。
 海外トレーダーたちの注文を国内商品先物市場につなぐニューエッジ・ジャパンでも、ここ数ヶ月、日本市場関連職員のリストラが続いているが、その背景には、「海外のアルゴリズム・トレーダーたちの東工取離れがある」(業界関係者)と見られている。「理由は、同じだ」と、同社を離れたある職員は漏らす。
  
 まずは取引所がプレーヤーを支援する米国
 電子取引時代の申し子ともいわれるプロップ・トレーダーについては、その発祥地である米国でも、これといった規制策が見当たらないのが現実だ。 、
 例えば、9月7日、ニューヨーク金先物市場では夜間取引で、一時、前日比100ドル近く暴落。その後戻したものの、その影響で、商いが薄かった7日午後の東京市場も174円下落した。下落の原因について、一般には「スイス中銀のフラン高抑制策によるドル加速が圧迫してマイナスに転落」などと報じられているが、市場関係者の間には、「日本時間の午後2時21分58秒から59秒までの1秒間、もっと言えばコンマ5秒の間に1850ドルで約600件の注文が成立して暴落に拍車をかけた。取引枚数は1千枚足らずと僅かだったが、あれだけの注文をコンマ5秒で成立させるシステムは、プロしかもっていない。おそらくプロップによる仕掛けだろう」という見方もある。このように、一部トレーダーが瞬間的に値段を動かすことは、確かにある。しかし、行き過ぎればまた別のプロップ・トレーダーたちが引き戻す。それは、かれらがローカルズと呼ばれていたフロアー時代からのマーケットの在りようでもある。
 そして、米国では、「米国取引所は、常にプレーヤーサイドにいる」(大手先物会社関係者)おかげで、プロップ・トレーダーたちもまた安心して、いびつな価格を取りに動けるのだとも見られている。そうして育成されたプロップ・トレーダーたちが、今の米国先物市場の原動力になっているのは事実だ。
 だが、今回の「発注制限」を見ると、わが国ではまだ、取引所にそこまでの覚悟はないようだ。
 この時期になぜ発注制限なのかについて、東工取関係者は真意を明らかにしていないが、業界関係者の間では、こんな声も聞かれる。
 「以前、東工取については、商社が寄付き前に大量の注文を出しておきながら、取引開始直前にキャンセルするなど、発注による価格操作が横行した。その時に商社ばかりが儲かる仕組みをなぜ許しているのかと騒いだのは、業界の古い関係者たちだ。プロップについても、同様のやっかみがある。そしてプロップが市場を混乱させるとクレームをつける古い先物関係者もいる。取引所としては、再びそうした声に背中を押されたのではないか」。
 実際、多数のトレーダーを抱えるプロップ・チームの中には、全社的に同一市場での限月間アービトラージに取り組んでいる会社もあれば、個々のトレーダーが海外市場とのアービトラージや、スキャルピングなど様々な手法で売買しているチームもある。中には、スタンダード・コンビネーション・オーダー(SCO)のように、限月違いの同枚数の反対売買なら証拠金不要という発注方法で膨大な枚数を発注するチームもある。
 東工取が導入したスパン・マージン制度が、プロップ・トレーダーに、売買がしやすい環境を整えた結果、決められた建玉制限が1千枚でも、一時的な発注枚数は数万枚に上るケースも生んだわけで、そうした活発なプロップ・トレーダーたちの売買を好ましくないと見る他の業界関係者もまた少なくないのかもしれない。
  
 金取引ができる市場は沢山ある
 だが、プロップ・トレーダーは、1枚でも多く取引し、1文でも多く利益を稼ぐのが仕事。逆に言えば、取引がしづらくなれば、他市場での取引を増やすことを考える。かつて、商社の発注制限は、結果的に商品市場からの商社撤退にまで波紋を広げた。今回のプロップについても同様の事態は考えられないのだろうか。
 あるプロップ・トレーダーがこう漏らす。「当社でもすでに、海外市場での取引準備を始めている」。
 東京市場の強みは、円建てと安定感だが、米国CMEでは今、着々と円建て市場の構築を進めており、金もその一つに予定されている。ISVの中には、海外市場との間で、円建てのアービトラージ・システムの構築を急いでいる会社もある。
 海外市場でなくても、「わが社では先日、国内の金CFDとのアービトラージを試み、好成績を上げたトレーダーもいる」というプロップ関係者もいる。「金の取引なら、どこに行ってもマーケットはある。香港でも中国でも構わない」(若いプロップ・トレーダー)と言う声を聞くと、国内商品先物市場の盛衰だけにとらわれがちな古い業界関係者たちとの変化を実感させられる。
 さすがにコストの高い金ETFや金現物まで手を伸ばす会社は見当たらないが、少なくとも「いつまでも、国内業者が東工取だけにしがみついている」という幻想は捨て去るべき時期が来ているのかもしれない。
 ちなみに、前回号でも指摘したが、現在、わが国金先物市場の売買高上位には山善商事、KOYO証券、ニューエッジ・ジャパン、アストマックスなどプロップ玉中心の会社が並んでいる。
 かれらが軸足を別の市場に移したとき、国内金先物市場はどうなるのだろうか。
 (2011年9月12日―第1104号)
              

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