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社会的存在価値
福島 恒雄
今この段階で商品先物業者は何をすべきなのだろう。まずは商品先物業者の社会的存在意義、そして投資家である顧客から何を求められているのか、を考えなければならないのは確かだ。投資家である委託者、顧客のニーズを取り込み、分析し、経営に生かすという作業こそが次のステップのための土台作りとなるはずだ。
一般の個人投資家が、何故、当業界、商品相場に入ってくるのかといえば、当然「儲けるため」で、業者の営業勧誘トークその他の情報により刺激された射幸心を満身に湛えながら商品相場の世界に入ってきている。そんな投資家を迎え入れるのであるから、個々の業者、個々の社員は、投資家の期待どおりとはいかないまでも、まずは「儲けてもらうことこそが仕事である」ということを自覚し、基本姿勢にしなければならない。とはいえ、実際問題として商品相場は難しい。そうそう儲かるものではないことは、各社の自己ディーリングの状況をみても判るが、基本姿勢を忘れたところにこの商売はない。
ここ何年かの流れをみると、業界全体で月々どの程度の新規があったかはわからないが、仮に1千人の新規があったとして年間を通じると1万2千人の顧客が新たに商品相場に参入した計算となる。にもかかわらず顧客数は減少し続け、預り証拠金額も激減している。これを、勧誘規制による新規の減少にのみ理由を求めていいのだろうか。新規に参入した顧客を大きく上回る数の退場者があったという現実の方を、当業界は考えるべきだと思う。
ここ数年間の金の値動きを振り返ってほしい。100万円を出さずに金の1キログラムバーを手にすることが出来たのはさほど昔の話ではない。再勧誘の禁止が勧誘規制に盛り込まれた改正法が施行された平成17年当時でも、200万円程度で1キログラムバーが買えたのではないか。仮に1グラム1千円を割っていた時代に新規となった投資家が、金1枚をロールオーバーしながら現在まで持ち続けていたなら、4倍以上の資産を手にしていることになる。ところが、現実には、この間に2回ほどあった暴落で金の投資家の多くが資産を失った。暴落、大暴落というが、いずれも150円程度で、当時の金価格からすれば5%程度で、これを大暴落というかいわないかは人それぞれだが、この5%の価格下落で、多くの投資家と投資資金が当業界から消え去ってしまった。
私はこの紙面を借りて、再三にわたり、当業界の投資行動におけるレバレッジ、及びリスクとリターンに対する考え方について再考を促してきたつもりだし、このことは商品ファンド協会の職員時代からも指摘してきた。
投資効率という意味ではレバが高ければ高いほどその効率も高くなる。ただ、投資というものは、特に金融商品への投資はリスクとリターンがフィフティ・フィフティで存在する。レバレッジは、この投資行動を効率化する一方、投資に絶対的に存在するリスクとリターンの度合いを増幅させる。この増幅度合いを、リターンのみで考えればレバは高ければ高いほどいいことになるが、投資家は投資する時、同等に増幅するリスクを覚悟する必要がある。商品相場における投資行動を取り扱う当業界は、この投資の原則中の原則を、数多の顧客に説明し、理解され、一定のリスクを覚悟をもって商品相場に入ってきてもらわなければならない。
企業にとって、利益こそが正義であり、最終目的である、ということは正しいことなのだろうと思う。しかし、企業は、社会的存在意義のうえに成り立たねばならないともいえなくはないだろうか。当業界の社会的存在意義とは、果たすべき社会的責任は何か。それを熟考した向こうに、当業界の明日の姿が見えるのではないかと思う。 |