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国境越え取引所統合の明暗(下)
杉江 雅彦
 昨年秋から始まった国境越え取引所統合話3件のうち2件がつぶれ、NYSEユーロネクストとドイツ取引所(DB)の統合だけがどうやら軌道に来ったのは、背後に国家のプライドや取引所株主の思惑が強く働いて、当事者間だけでは思うようにならない複雑な理由があったからである。
 もともと国境越えでも国内同志でも、取引所の統合や合併は収益の拡大が主たる目的ではない。それよりもむしろ、たとえば機関投資家やファンドなど大口投資家の参入によって、より高速で大量の売買注文執行を可能にするシステム構築が要求されるようになり、そのための資金調達やコスト節約のために他の有力取引所との統合を考えたことの方が大きい。またNYSE(ニューヨーク証券取引所)のように、規模は大きいが現物証券(とくに株式)に特化していて、より収益効率の高いデリバティブ商品を持たない取引所は、なんとかデリバティプ商品の強い取引所と組んで組織を守ろうとする欲望に勝てなくなる。だからこそNYSEはプライドを捨て、ドイツ取引所に統合の主導権を譲ったのであろう。
 さてこの両取引所の合併は、わが国の場合でいえば東京証券取引所と大阪証券取引所の統合問題にも通ずるものがある。東証は現物株式では国内で圧倒的比重を誇っているが、金融デリバティプ商品では大証に水をあけられている。一方の大証は現物株式では東証の足元にも及ばないが、金融デリバティブでは東証を圧している。この両取引所の悩みは統合によって理論的には解消されるはずだが、どちらもプライドにこだわってなかなか話が前に進まない。果たして早急に話がつくのかどうか。また統合が実現しても、お互いに収益が上昇して黒字体質に戻すことができるのかどうか、きわめて疑問に思える。
 これまでの話はいずれも証券取引所中心の動きであり、商品取引所同志の統合話をほとんど聞かないのは何故だろうか。欧州の場合は英国以外に有力な商品取引所は育っておらず、金融デリバティブ商品は証券取引所に取り込まれている(たとえばDBなど)。また米国では証券と商品とは制度的に分かれていて、両者間の合併には抵抗も大きい。日本も米国に似て証券と商品は法制的に別組織であり、両者間の統合は現状ではむずかしい。いや、それ以上に証券取引所にとって(外国からみても)商品取引所は魅力に乏しく、かといって商品側から証券に挑戦する力もない。残るは商品取引所同志の統合ということになるが、取引所間の統合はさきにも述べたように費用節減効果しかなく、統合によって取引高がふえたという話は世界的にも聞いたことがない。

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