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先物協奏曲・金と原油
杉江 雅彦
金と原油はいつも、商品先物市場の主役として世界中から注目されてきた。この二つの商品を主楽器とした協(競)奏曲「金と原油」では、さしずめバックのオーケストラがNYMEX、指揮者はヘッジファンドというところだろうか。
指揮者は世界経済の動向や市場環境をみながらタクトを振る。米国の金融緩和や中東の地政学的リスクなどの材料が出るとフォルテ(強く)のサインを出し、金や原油の音(値)を上げる。反対に取引所が証拠金を上げるなど規制を強めた場合はピアノ(弱く)のサインを出し、音(値)を下げるといった具合である。原油が1バレル・100ドルを突破し、金も最高値を更新した頃を第1楽章と考えれば、いまは曲調を整える静かな第2楽章に入ったあたりか。緩急自在の指揮ぶりには恐れ入る。それではいつ、ドラマチックな第3楽章に移るのだろうか。それが楽しみでもあり、心配でもある。
金と原油の動きは、それぞれの商品が独自に持つ特徴があり、需給要因も異なってはいるが、最近における両商品の価格変動はまさに協奏であり競奏でもあるといってよかろう。以下では、両者のからみ合いについての私見を述べたい。
金も原油も、相場上昇の源はインフレ思惑にあると思われる。日本は先進国の中で唯一、消費者物価上昇率ゼロでデフレ下にあるといわれるが、わが国以外の先進国も現状ではインフレとはいえない。ところが中国、ブラジルを先頭に新興国の物価上昇は顕著である。新興国のインフレの原因は商品や資源に対する旺盛な需要拡大によるが、その理由のひとつが原油の高騰であり、同時に原油価格の上昇は新興国の需要増大の結果でもある。ヘッジファンドを含む世界のマネーが原油先物市場に吸い寄せられる根拠も、そこに求めることができよう。
原油価格の変動要因が比較的単純明快であるのに対して、金はいくらか複雑であるといわざるをえない。何故なら金はインフレヘッジ資産としての実物価値と、ドルに代わる無国籍通貨としての機能との二つの性格を持っているからである。金がインフレに強いことは今更いうまでもないが、世界経済がインフレに向かう動きを加速するかどうか、当面は米FRBのQE2(量的緩和第2弾)終了後に注目したい。さらにドル安になるようだと、無国籍通貨としての金へのシフトも考えられる。
ギリシャ、ポルトガルなど南欧の財政困難がどう動くかも懸念材料ではあるが、インフレがすすめば実質的な借金棒引きとなり、金にとってはむしろ好材料かも知れない。とすれば、この協(競)奏曲第3楽章の始まりは6月か。 |