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コメ先物上場の光と影
杉江 雅彦
 東京穀物商品取引所と関西商品取引所が揃ってコメ先物の試験上場を申請した。6年前の申請は農水省によって不認可となつた経緯があり、今回は二度目の挑戦である。前回にくらべると上場への環境は好転しているといってよかろう。
 まず第一に、民主党政権が誕生して農家の戸別補償制度が始まり、その一方でコメの価格は市場に委ねるという農業政策の転換が起こったことである。そこで農業者や流通業者に価格変動リスクをヘッジする手段が必要となる。第二には、コメの指標価格を決めていた全国米穀取引・価格形成センターが今月末で解散するため、コメ取引の透明性を確保するための価格指標が必要となる。コメの先物市場ができればその機能を果たすことができる。さらに第三点として、全国農業協同組合中央会(全中)が現在の営農規模を約10倍に拡大するという路線転換を提言している点も挙げておきたい。これが実現すれば、大規模農家や農業生産法人にヘッジニーズが生まれるからである。
 しかしよく考えてみると、折角コメの先物市場が誕生しても果たして十分な取引量が確保されるのか、その点が疑問に思えてならない。近年、国内の商品先物市場では取引量の激減が続いており、それは商品先物取引業者に再勧誘禁止や不招請勧誘禁止などの行為規制が課せられた結果でもある。そういう中でコメを先物上場しても、どこまで取引量がふえるだろうか。
 17世紀後半から1939年まで延々と続いたコメの先物取引は、もっぱら米仲買人と米問屋、それに相場師だけが参加するプロの市場だった。現在はまったくちがった取引者の構成である。また日本人の主食はコメで流通量が多いといっても、近年とみに食のコメ離れがすすんでいる現実からは、コメが先物上場されてもそれがすぐに取引量の増加につながるとは考えにくいる
 したがって、たとえ今回の申請が認可されたとしても(取引量の確保が困難だと農水省が判断したら認可されない可能性がある)、マーケットとしての機能が十分に果たせるよう、取引所と業者が一丸となって努力する必要がある。
 もうひとつの大きな壁は環太平洋経済連携協定(TPP)参加の問題である。紙面の関係で十分な議論ができないが、原則100%の関税撤廃を目指している交渉参加国の中で、日本はコメは例外品目にしてくれとは言い出しにくい。お隣の韓国のように、自動車や電気電子機器と農産物を差し違えるような荒業でもしない限り参加はむずかしかろう。この点では農水省も腰が引けている。コメの先物上場がその犠牲にならなければよいが。

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