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中小企業の為替損失問題
杉江 雅彦
 今年に入って金融庁が発表した、中小企業の聞き取り調査の結果を見て驚いた。それは全国の中小企業が銀行から買った為替デリバティブに多額の損失が生じ、そのため経営難に陥っている企業もすくなくないという事実である。全国で約1万9000社が4万件の損失を抱えたままだというのである。全体の金額は発表されていないようだが、恐らく半端な数字ではあるまい。
 為替デリバティブはFXと同じで、投資元本の保証がないリスク商品であるが、そのような金融派生商品を中小企業に販売したのは銀行であり、その相当部分は三大メガ銀行が売ったものらしい。製造業や流通、サービス業が多い中小企業は個人とちがって企業なのだから、リスク商品についての知識を身につけているのだろうか。なかには専門家はだしの経営者もいるにちがいないが、恐らくその多くは個人とそれほど知識の差がない、素人に近いのではないかと想像している。
 そんな中小企業に巨大銀行が為替デリバティブを売り、2008年秋以降の急激な円高傾向のために多額の損失を中小企業に負わせたのである。最近では全国銀行協会が運営する紛争解決機関に申し立てるケースがふえているとのことだが、申し立ての理由には「損失が出ないとの説明を信じて買った」とか「融資と抱き合わせで無理やり買わされた」といった内容のものが多いという。“お堅い”はずの銀行がかなり強引な勧誘で販売してきたことがわかる。
 この種の金融派生商品は損失が発生して解約しようとすると、高額の違約金を払う契約になっているのが一般的である。紛争解決機関への申し立て内容のなかには、銀行に違約金なしで解約を求めるものもすくなくない。銀行には融資先である中小企業の為替損失が原因で経営難に陥ることを避けるために、救済融資を行う必要があるだろう。しかし損失を蒙った中小企業のなかには損失負担を求める場合もある。これは損失補填を禁止する金融商品取引法に抵触するため、銀行は応じることができない。
 損失補填といえば、かつてバブル崩壊後にリスク商品を大量に販売した証券会社が、損失補填を行ったことが思い出される。損失補填禁止はそれを機に法制化されたものだからである。それにしても中小企業の為替デリバティブ購入といい、個人のFX投資といい、どうして円高に向かって外資(とくに米ドル)買いをするのか。中小企業にしても外貨預金感覚で為替デリバティブを購入したのだろうが、私にはどうも理解できない。
 これから先、為替損失をめぐって裁判沙汰やADRによる解決などがふえたそうだが、リスク商品販売のプロである商品業界からの意見も聞きたいところである。

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