|
わが国の商品ファンド(8)
営業部門の報酬体系
福島 恒雄
商品ファンドが売れなくなった。この販売不振の原因と改善策について、会員各社にアンケート方式で意見を求めたりもしたが、明確な解答を得られず、結局、会員から出された様々な意見をまとめ、「低金利、ゼロ金利政策による元本確保型ファンドの組成が難しくなったことが最大の理由」と理事会に報告した記憶がある。
株価の大暴落は、どちらかといえば商品ファンドにとって追い風になるはずであることはブラックマンデーで実証済みだが、そういった現象が日本では発生しなかった。価格の下落時も投資チャンスになり得ることやヘッジ機能、株や債券などの伝統的投資商品と非連動的であることなどの先物取引自体の特性に対する理解が低く、一般には、住商リースの松沢氏の指摘する、暗い、影の部分ばかりのイメージが先行していた。
商品ファンドは、商品先物取引が本来的に包含するリスクをさまざまな商品に分散、多角的に投資することでそのリスクを軽減していることなどの特性に対する理解が広く浸透していなかったということもある。
今から思うと、最大の原因は、バブル崩壊により余っていたはず資産が激減し、財テクブームどころか投資に回す資金が消えてしまったことが最大の原因といえるが、バブル崩壊、日本経済の瓦解という歴史的な事象の只中にいると、漠然とした不安ばかりで現実を的確に把握することは難しいということを自嘲の思いを込めて痛感させられている。
この会員アンケートにおいて、商品ファンドの販売については後発・新規参入組である当業界は専ら最低販売単位規制を掲げていた。
当業界は、法人投資家を相手とするノンバンクと異なり、小口投資家を中心としており、販売単位規制に対応できる投資家は数少ない状況だったはずだから、販売単位の小口化は当業界が商品ファンドを販売するうえでの必須要件ともいえる。また、商品ファンドの商品特性として、他の一般的金融投資商品で構築されたポートフォリオの一部に組み込むことでパフォーマンスを引き上げる可能性が高いということがあり、その割合は全体の1割〜2割が適正水準で(商品ファンドの理論的バックボーンであるリントナー論文もこの考え方に沿ったもの)、1億円の商品ファンドを販売する場合、対象となる投資家の投資資産は少なくとも5億円規模以上ということになる。とてもではないが当業界の顧客層とは相いれないもので、当業界が、販売単位規制の緩和、撤廃こそが商品ファンドの販売不振を打開するための最重要課題とみなすことは当然と言えば当然である。販売単位を小口化さえすれば、当業界の営業力がフル稼働して商品ファンドを販売する、という意見に対し、私個人としては当時、「小口化しても売れるはずがない」と思っていた。
まず、営業部門の報酬体系から考えて、商品ファンド販売にモチベーションを当業界の営業部門が持ちうるのか、ということがある。商品ファンドの販売手数料は1.5%〜2%で、1億円売って200万円、100万円では2万円という計算だ。当時、委託手数料が自由化されていたか否か定かではないが、おおよそ建ち落ちの往復で投下資金である委託証拠金の5%〜10%程度だったのではないだろうか。新規預りが100万円だったとして、少なく見積もっても5万円を手数料として受け取れる。
確かに当業界の営業力の凄さには定評があるが、その営業力も結局のところ報酬体系に依存しているのであり、モチベーションの維持も報酬に負っている。同じ金額の新規を開拓するなら、受取手数料が2倍、3倍以上となる先物取引自体の方に力を入れることになるのは必然で、いくら小口化しょうと、その強力な営業力を商品ファンド販売に振り向けることはできない。 |