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あきらめないで
沼野 龍男
「不招請勧誘の禁止」とは、個人顧客に対し「訪問し、又は電話をかけて」勧誘することを禁じる規定である。ここで云う「勧誘」とは何か、どの様な定義なのかを正確に認識しておく必要がある。
 この度の「商品先物取引業者等の監督の基本的な指針(案)」の中で、「勧誘」とは、商品先物取引業者が顧客に対して、先物取引契約の締結、又は契約締結後の個々の取引の委託等の意思形成に影響を与える程度に(青色下線筆者)商品デリバティプ取引を勧める行為をいうと定義している。したがって、初めて勧誘する顧客に「取引を始めませんか」などと勧める場合のみならず、既に取引を行っている顧客に「取引数量を増してみませんか」などと勧める場合も「勧誘」に含まれる。又この様に直接取引を勧める場合のほか、客観的にみて顧客の取引の委託等の意志決定に影響を与える程度に取引のメリットを強調する場合も「勧誘」に含まれるとしている。この見解は、金融庁や経産省が従来定義してきたものと変わっていない。他方、業者が顧客の意志決定に影響しない説明(先物取引とはどんな取引か、発祥、市場の必要性、強み、弱み、特色等)を行い顧客が自己責任任に基づき委託等の意志決定を行っている場合は、ここでの「勧誘」に該当しないとしている。
 例えて言えば、主婦が魚屋の前を通ったとする。A店の親父は「マグロは大間産の生マグロなので少々お高いです。アジはいつも通り腰越沖で獲れたものだが少し小さ目、シジミは宍道湖産が入荷せず山中湖のものなので、お値段は安目です」と。他方、B店の親父は「今日は大間産の生マグロが入ったよ。味は最高、滅多に入らないから是非買っときなよ。アジは小振りだが唐揚げがいいよ、カルシウムたっぷり、余ればマリネにしとけば1週間は大丈夫、早い者勝ちだよ。シジミはお買い得だね、いつもの半値だよ」。
 Aは商品の説明をしている。主婦が予算と献立の中で選んだ場合、自己責任に基づく買い物となる。Bは、早く売りさばきたいので、あの手この手で調子よく勧めている。「じや、買おうかしら」となれば「勧誘」に応じたと云うことだろう。
 「説明」という定義で大切なことは、事実をありのままに包み隠さず開示するということ。表も裏も、都合の良い事も悪い事も正直に伝えることだ。社内のどのような部署で作成されても、又外部の客観的と思われるものでも、好都合情報ばかりを収めることは否定される。そうでなくても、業者側が保有する情報は、顧客のそれより質量共に圧倒的に大きいものだ。(いわゆる情報の非対称性。エンロン事件に教訓が詰まっている)
 又、「説明」活動を通じて、顧客の属性を把握し次なる「勧誘」活動へステップアップ出来るか否かを「適合性の原則」に照らして判断することになる。日本が真に先物市場を必要とし、市場が目的に添って機能するためには、豊富な流動性を提供する多くの投機家の存在がなければ成り立たない。その仲介者たる取引業者と外務員の努力には限界がある。先物市場の啓蒙や情宜に国家予算を割く位のフォローがあってもよいのではないか。
 今年1年、どんなことがあっても諦めないでもらいたい。

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