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COP16と石油の行方
杉江 雅彦
メキシコのカンクンで開かれたCOP16、邦訳すると国連気候変動枠組み条約締結国会議という長ったらしい名称の会議では、「妥協なしに、我々の生存はない」、つまりできるところから対策を始めようという点で、なんとか合意に漕ぎつけることができた。それが“カンクン合意”である。
「産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑える」、すなわち二酸化炭素(CO2)の排出量を削減するという大目標を達成するには、先進国にのみ削減目標とその実行義務が課せられている「京都議定書」では到底不可能である。それはCO2の排出量が世界最大の中国(22%)と、それに次ぐ米国(19%)の二国が参加していないからに他ならない。会議の冒頭で、日本が「京都議定書」の延長に反対したのもそのためだった。
CO2の排出が最も多いのは自動車であるし、中国とインドを筆頭に新興国で自動車の普及が急ピッチで進むことを考えると、中国の参加が是非とも欠かせないことは自明の理といえる。その中国もなんとかCO2排出量の国際的検証に応じたのは一歩前進だが、それでも法的枠組みを作るまでにはいたらず、来年に南阿のダーバンで開かれるCOP17に先送りされた。
さて、今回のCOP16の結果によって今後の石油需要がどう動くのか、本コラムの後半はこの点を占ってみることにしたい。自動車の話を続けると、先進国ではEV(電気自動車)の開発が急ピッチですすんでおり、その戦陣を切って日産が先日、「リーフ」の発売を始めた。しかしEVはまだまだ価格が高いだけでなく、電池の寿命や充電設備などの課題もあって、早期に世界中で普及するとは考えにくい。とくに新興国では、安価な小型ガソリン車が急増する可能性が高いと思う。そういう意味でも、石油の需要は増えこそすれ絶対に減らないのが確実になってきた。もし来年のCOP17でもCO2削減の法的枠組みが決まらなければ、いよいよ石油需要が増え続けることは間違いない。
IEA(国際石油機関)の予測を借用すると、2035年までに世界の石油需要は35%増えることになる。その一方で石油の供給はといえば、OPEC(石油輸出国機構)諸国は生産量を抑制する姿勢を崩さず、米欧の石油メジャーは海底油田やオイルサンドなどの開発を目指しているが、これには高度の技術とコスト高が避けられない。石油価格はさらに上昇が続くとみてよかろう。昨今の原油先物市場では100ドル突破を目指す動きをみせているが、これが2008年7月の史上最高値への再挑戦の始まりになるのかどうか。“カンクン合意”の先に見えるのは石油価格の高騰であるように思える。 |