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商品ファンド(5)
福島 恒雄
最初の事務局訪問者は当業界の飛び込み営業だったが、その後は当業界からの会員加入に関する対応に追われることになる。出処がどこかは不明(後々の話だが、この噂は会員を多数にすることで天下りポストの確保を狙った主務省筋が流したものだったようである。)だが、協会に加入すれば商品投資販売業の許可が取れるという噂が流れたようで、商品取引員の方々から電話でまず問い合わせがあり、次いで協会事務局を訪れ、加入を懇願されるのである。電話の応対で、「協会加入と許可は全く関係ありませんよ」と説明するのだが、聞く耳持たず、という感じで、それも代表者レベルの方々がお供を連れて事務局を訪ねてくるのである。
法律が成立したからといって政省令はまだまだ決まっておらず、許可の種類や許可要件すら決まっていない状況で、協会にそれなりの入会金を支払って加入いただき、会費を払って協会の基盤を固めていただくことは当然歓迎すべきではあるものの、それだけの負担をかけた結果、許可が取れなかったということになったらという心配が事務局サイドには非常に強かった。また、アプローチをかけてきた方々には商品ファンド自体に対する知識が浅薄で、わけもわからず時流に乗り遅れまいという意識しか持ち合わせていない方も居られ、協会に加入すること自体が目的化しているとすら感じられた。
また、一年後の許可取得の条件として、一定の販売実績や組成実績が必要で、それに携わった業務経験者の存在が必要であることが想定されていたが、これも当業界の中に、「商品ファンドを購入すること」が商品ファンド業務の実績につながるという誤解が蔓延していた(これは、ある商社が当業界に商品ファンドを販売する時のセールストークだったことが判明した)。商品ファンドを購入するのは投資行動であって、単に投資家としての存在でしかなく、これを組成、販売する業者の実績になり得ないことは極めてわかりやすい論理で、今更ながらこの思い込みの酷さには驚かされるが、この誤解を解くのにもずい分苦労させられた記憶がある。
また、この時期は、当業界で「一任売買」論議が強まっていたようで、商品ファンドを一任売買の一つのシステムと思い込み、協会に入って商品ファンドを手掛ければ一任売買ができると信じ込んでいた方も居られた。成立したファンド法を読めば、投資一任行為ができる商品投資顧問業の許可を取得すれば可能ということもあって、一任売買を指向するなら、ファンド協会に入るのではなく、商品投資顧問業の実績をあげる、つまり運用パフォーマンス作りが最優先課題ではないか、という説明を繰り返し行わざるを得なかった。
以上のようなドタバタは、昼間の就業時間中のことで、6人のスタッフが入れ替わり立ち替わりで対応していたのだが、その一方、夜は夜で政省令の制定に忙殺されるという日が続いていた。
事務局は業界と主務省のつなぎ役として存在し、政省令に業界の意見を反映させるには業界の意見を取りまとめ主務省に示すことが必要となる。
今も変わらないと思うが、役所というところは夜動く。夜、9時、10時ころから折衝が始まるようで、その前までにその日のテーマに関する情報をまとめて担当官に渡すのだが、それで終わるわけではない。折衝段階で問題が出てくると、事務局に電話が入り、追加情報のオファーが来る。事務局は業界関係者に電話して、業界の意見を集約する作業をするのだが、今のようにメールやインターネットが普及しているわけもなく、全て電話とファックスのやり取りで、それをまとめてワープロで清書して役所に送る。これを繰り返すうちに白々と夜が明けるということになるのである。 |