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コメ上場の条件変化
杉江 雅彦
東京穀物商品取引所がコメを先物商品として、再度上場申請するという。最近の東穀取は運営に青色吐息の有様で、もっぱら財務上の見地から所有不動産を売却したり、日本商品済算機構(JJCCH)の持株を手放すなど、見栄やプライドをかなぐり捨てた動きが目立つ。
売買高の激減が東穀取の苦境をもたらしたのはいうまでもなく、そのことが東穀取の責任だとはいえまい。しかし、取引所として主体的に市場振興に貢献できるのは、いかに投資家にとって魅力的な先物商品を上場するかであり、またその新規上場商品の市場拡大に努力することではないだろうか。その意味で、コメの上場は東穀取にとって乾坤一鄭擲の、そして最後の挑戦といえそうである。
筆者は4年前に東穀取がコメの上場を申請する前、内閣府の要請で農政専門家の何人かと、コメの先物商品化の是非を議論する機会を持ったことがある。その折、学界の権威や全農の幹部から慎重な意見が強く表明されたことを、いまでも記憶している。しかし、その当時といまでは条件ががらりと変わっており、東穀取の制度設計を行政庁への説得力に宜しきを得れば、実現の可能性は十分に有ると言ってよかろう。筆者の考える“条件の変化”とは、次のようなものである。
なんといっても、昨年の政権交代によって、自民党時代の農政から大きく変化したことの持つ意義が大きい。つまり民主党政権はそれまでの農家保護の手段が価格維持政策であったことを枇判して、農家に対する直接支払いに切り換えたからである。これは民主党のマニフェストでもあった。いわゆる“農家戸別所得補償”である。
この制度について詳しペ述べることは省略するが、要するにコメの価格は市場に任せ、生産調整を実施する農家に対して10アール当たり1万5000円を支払い、米価が下がれば追加支払いをするという制度である。すでに今年度から実施されており、概ね農家には好評のようだ。逆にコメの市場価格の変動が大きくなる懸念があり、とくに流通業者などを中心にリスクヘッジの場としてコメの先物市場が創設されたら福音であるにちがいない。
条件の変化のもうひとつのポイントは、コメの市場価格が長期的にも短期的にも下がり続けていることである。現政権の農家所得補償制度では米価(当年度産)が下落した分も戸別支払いが行われるため、財政的理由からいっても米価下落は避けたいところであろう。コメの先物市場の機能が価格調整にあることは明白であり、この点でもコメ上場の必然性は高いというべきである。江戸の昔、堂島のコメ先物市場が公認された背景に、豊作続きと新田開発で米価が下落した事実があったことと、奇妙に符合するのも興味深い。 |