平成22年 9月6日(月)(毎週月曜日発行)第1054号
      発行所 有限会社 先物ジャーナル社
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日本テクノシステム


 
◇三菱商事F 商品先物から完全撤退
   最後の商社系商品取引員に見る国内商品市場の課題
◇“めらの目”フランス、商品市場の規制求む
         金融投資家の過剰参入防止?
◆今年度税制改正要望決まる 商品は「損益通算」を要望
◆インド=商品先物市場の売買金額が100兆ルピーに
◆東穀取=8月出来高、前月比45%増
◆“アングル”
 ・中国のトウモロコシ、大豆、コメ輸入増加
 ・トウモロコシが上がる─日照りの夏米国作柄に影響


三菱商事F 商品先物から完全撤退
最後の商社系商品取引員に見る国内商品市場の課題
  
 三菱商事フューチャーズが8月31日、10月29日にオンラインの商品先物受託業務を停止することを発表した。それに先立ち、10月22日には法人営業も停止する。同社の撤退により、「商社系取引員」のすべてが、商品先物市場から消えることになる。

 突出していた赤字額
 三菱商事フューチャーズ(MCF)は2009年3月期決算が約15億円の赤字となり、同3月には対面営業部隊とその顧客をセントラル商事に事業譲渡、そして20億1400万円の赤字を計上した今年3月にはFX事業も上田ハーローに譲渡した。その間、役職者を含めた大規模なリストラも進めていた。
 そんな同社の元社員からは、「FXを譲渡した時点で、商品については他社のオンライン事業を買収してでも再生させようという案も出ましたがまとまりませんでした。ですから、生き残ったリテールのオンライン商品部門の撤退も時間の問題と考えられていましたが、法人営業については、ニューヨーク、ロンドンとの世界先物戦略三極体制を維持するために存続させて、来春以降に三菱商事グループ企業の三菱ユニメタルズに吸収させるシナリオでいくと考えられていました。このタイミングでの全面撤退はやや予想外でした」という声も聞かれる。しかし、親会社である三菱商事が資源ビジネスで好調な業績を示す中、金属部門の子会社の中で、MCFの赤字額は突出していた。
 「15億の赤字が出た時点で、長年蓄積してきた利益をすべて吐き出していました。結局昨年度の赤字約20億円が、本社(三菱商事)が許容できる商品先物取引業への投資額の上限だったのでしょう」(同)。法人部門は結果的に、ニューエッジ・ジャパンに譲渡されると報じられた。
 商社として、一部門の子会社に過ぎない商品先物取引会社。収益が見込めなくなれば撤退するのもビジネとを思えば、MCFはよく頑張ったといえるのではないでしょうか」とこの元社員は語る。
 「しかし一方で、こうした商社系取引員の相次ぐ撤退の背景を見るとき、既存の商品取引員だけでなく今後、証券・金融業界からも市場参加者を取り込もうとする目下の国内商品先物市場が抱える課題も伺われる。
  
 「ビッグネーム=担い手」への疑問
 商社が相次いで商品取引員を設立した際、主務省、取引所関係者の多くは「ビッグネーム」参入=商品先物取引のイメージアップ=新規顧客拡大に結びつくと期待した。しかし、大手商社系列の取引員であっても、商品取引のリスクは他の取引員で取引する場合と同じ。このため、いずれの会社も当初は「他社からの乗り換え」などで、多少の顧客は獲得したものの、損をした顧客から親会社にまで苦情が寄せられるなど、多くの商社系取引員がレピュテーション(評判〉の悪化に悩まされた。
 MCFの場合、オンライン化によって、こうした悪い評判から抜け出せると考えたのも束の間、今度は手数料値下げ競争で収益力を失った。そればかりでなく、肝心の新規顧客の拡大にもつまずいた。というのも当時、インターネットで自分からデリバティブ、とりわけ「商品先物」を勉強しようという顧客の数は、株やFXに比べて極端に少なかったからだ。
 商品取引におけるオンラインのビジネスが現在もなお難しいことは、他社の顧客口座買収により、昨年だけで口座数を2万4960人から3万3532人に増やしたドットコモディティでさえ、今年3月期決算は2億2000万円の赤字だったことを見ても分かる。新規顧客が増えず、既存の顧客を他社から奪うためには手数料を値下げせざるを得ず、それが収支の悪化を生むという悪循環である。インターネットなら生きるだろうと思われた商社というビッグネームも、商品先物のイメージの低さというハードルを乗り越えることはできなかった。
 最後まで存続が期待されていたというMCFの法人受託についても、仮にマーケットにまだ投機収益を期待する小口の個人投資家が「買い手」として多数存在していれば、将来性を見込んで残されたかもしれない。しかし、近年の取引員に対する勧誘規制強化やFX等の新しい投資手段の普及によって、小口の個人投資家が激減して流動性が落ち込んでしまっている現状では、将来性を訴えることも難しかったに違いない。
 今、国内では総合取引所構想などの形で、政府が金融市場の整理統合を唱えている。商品先物市場についても同様に、とかくイメージが悪いとされる既存の取引員の整理淘汰を進め、証券会社などからの新規参入を促そうとしているように見える。
 しかし、一部のオンライン証券を除いて、目下のわが国の証券会社の多くが、顧客には株や債券、投資信託などを「資産」として提供している。こうした旧いタイプの証券会社に、短期的に顧客資産を減らす可能性のある「商品先物」の普及啓蒙を望むのは難しい。ビッグネームや業者イメージの良さに依存するのではなく、わが国商品先物市場を本気で担う気概のある業者をどう育成していくかが、目下の課題であることを、今回のMCF撤退が示唆している。
(益永 研)
 (2010年9月6日―第1054号)
              

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