第 344回

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米良 周              
 1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 先物ジャーナル社・代表取締役。09年同社退社
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)。近著(08年6月)「商品先物取引の手引き」(同友館刊)がある。

フランス、商品市場の規制求む
金融投資家の過剰参入防止?
  
 フランスは欧州の商品取引監視体制を徹底的に見直す動きを強め、欧州委員会に個々の利用者の建玉制限を含めて、原材料市場に包括的規制を導入するよう促している。
 クリスティン・ラガーデ財務相によるブリュッセル向け書簡(8月31日付)はワシントンが今年、議員の投機に関する苦情を背景に商品市場への監視を強化したのを受けた形である。
 フランスのニコラス・サルコジ大統領は11月のG20の議長としての主要目標のひとつに商品市場の規制への国際合意をかかげている。
 ラガーデ氏は書簡の中で、商品デリバティプ市場のかなりの部分はEU金融市場ルールの完全適用外にあり、市場乱用などのルールは商品デリバティブに不適当である、としている。「商品デリバティプ取引に関する欧州の規制は不十分だと考える」と述べている。
 ミカエル・バーニアー欧州コミッショナー(インターナル・マーケット)は「市場の重要性と欧州の共同歩調の必要性に関して見解を同じくする」とし、フランスのイニシアティブを歓迎している。
 英紙ファイナンシャル・タイムス(FT、1日付商品欄)は「フランス、ルール強化への動き促進」という見出しで、欧州での商品市場の規制強化と透明性向上に向けてフランスが先頭に立って動き始めた、と伝えている。
 「パリは規制の強化と透明性確保が石油、ガス、電力、金属、カーボン・クォータ(排出権取引)、それに農産物の価格変動を抑え、生産者、消費者の双方にとってよい結果をもたらすと期待している」
 「フランスの提案は世界最大の商品市場のいくつかの所在地であり、原材料を扱う銀行の本部があるロンドンの抵抗に直面するだろう」
 「フランス当局者はいくつかの商品でデリバティプが現物に比べて急激に取引量を増やし、かつて単純素朴にヘッジに利用する金融手段がいまや基盤となる商品の価格を動かしている(逆ではない)と主張している」
 「ブリュッセルへの書簡でラガーデ氏は『商品デリバティプの価格変動をあおる金融投資家の果たす役割りについてはっきりとは理解できない』と述べ、『現物市場には規制・監視体制はなく、商品デリバティプの一部だけがEU金融市場ルールでカバーされてい
る』としている。
「ラガーデ氏は市場乱用とシステミック・リスクを減らす建玉制限は不可欠であると主張している。またコミションに特に現物市場に関し価格形成機能を改善し、規制当局者が市場全般の取引を監視するためにも格段の透明性を考慮するよう促している」
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 FTの記事をほぼ全文逐語訳してみた。
 なぜいま商品市場の規制強化なのだろうか。ヘッジの域を大きくはみ出して金融投資が現物を動かす。現物需給をベースにして、その先行きの変化に賭ける投機の存在は商品先物市場には欠かせない、だが資金力に物を言わせる行為は現物価格そのものをゆがめる。だから建玉制限を設けるべし、という主張はその通りだと思う。
 現物市場の格段の透明性考慮を求むはどうか。本来当業者同士の取引の場に資金力にまかせた金融投機が参入、現物市場を操作して、本命の先物市場で利を得ようとする行為に目を光らすべきだということなのだろうか。
 いずれも公的性格を持つ先物市場の開設・運用者の本来の使命のはずである。
 なぜいまなのか、の疑問への筆者なりの答えを考えてみる。
 07〜08年の米国先物市場主導の商品高騰時に比べ、ここ1年の高下の発信地は欧州市場が目立つ。ココア、コーヒー(ロブスタ)、白糖、それに小麦(小麦粉)…。いずれも金融投機家が参入、現物の需給実態を踏み外しているではないか。あの米国でさえ07〜08年時の反省に立って規制強化に動いている。なら金融投機から欧州はなおさら距離を置くべきだ、と考えたのではないか。
 取引の透明度向上の主張はどうか。だれが、なにを、どれだけ、いつ買っているか(売っているか)。建玉制限には建玉の内容開示を伴なっているはずで、市場管理の手がかりにするなら、公開してしかるべきではないのか。
 ひるがえって日本。個人を締め出し、機関投資家(金融投資家)中心の市場を目ざすとしたら、だれが歯止め役になるのか。機関投資家が参入しやすいようにとする(おそらくは)手口非公開路線。その暴走のチェック役は自己意志で参入する個人投機家こそはまり役ではないのだろうか。
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 なんだかなあ。
 FTを自宅で購読(代金は会社持ち)しているが、Y紙販売店経由で夕刊時間帯の3時半ごろに届く。トップ記事の次にマーケッツ面に目を通す。
 日替わりとまではいかないまでも週替わり以下の短かいサイクルで、各種データをめぐって“リスク回避”と“リスク許容”の市場人気がくるりと変わる。
 で、2日付の1日のグローバル市場概観欄の見出しは「二番底懸念後退で強気が出番」
 株、商品が買われ、国債、ドル、円、スイスフランが下落(金も)した。
 「市場、米国と中国のデータが元気づける」(1面トップ記事見出し)。製造業の景況感上向きのデータが市場を鼓舞したという内容だ。
 データ至上主義の金融市場、それに疑いもなく同調する商品市場。なんだかなあ、と考えたとしても無理からぬところだろう。
 「食肉価格上昇、食品インフレ懸念押し上げ」(カンパニーズ&マーケッツ面)の見出しにほっとした。
 世界的デフレ懸念が払拭される兆しとみたわけではなく、そこには金融市場から距離を置いた商品相場を貫く、需給実態に基づく上昇理由が記述されていたからだ。
 長期低迷下に飼育意欲を低下させた米国(牛)、オーストラリア(ラム=子羊)の産出が低下する一方、新興国所得向上に伴なう肉食志向のトレンドが続く。牛肉輸出大手ブラジルでは国内需要増で輸出余力が縮小している。先進国の需要も景気停滞下でも減らない。
 かくて、シカゴの生牛先物価格は8月に一時、22ヵ月振りの高値1ポンド1ドルを付け、オーストラリアのラム価格は1キロ5.50オーストラリアドルを越え、1973〜74年以来の高値にある(国連農業食品機構=FAOの食肉価格指数は8月まで1年で16%上昇、1990年来の高水準)。
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 ここでお知らせ。
 先物ジャーナル社の編集・発行人である高橋伸幸が加療入院するため、この号から編集業務をエム・ケイ・ニュース社に委託することにしました。
 編集の任に当たる成毛浩之さんは編集のプロで、10指に及ぶ媒体を手がけてきたご仁です。1面の取材・執筆は益永研さんが中心。自他ともに認める国際通(国際派)。
 2面は原則として米良周が執筆します。沼野龍男は先物寸言を中心に商品先物業界への提言記事を執筆します。
 高橋の不在中も引き続さご愛読、ご鞭たつをお願い致します。


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