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高額証拠金の時代に突入か
高橋 伸幸
改正商品取引所法の施行に向けて、政省令など細則の取り決めが大詰めを迎えている。投資家の担い手である取引員にとって、良し悪しは別にして決められたことに従って行かざるをえない宿命にあるから、主務省の対応の遅れは業界周辺の疑心を募らせている。
勧める側の取引員(外務員は「初回の投資金額以上の損失を出さない取引」、それ以外の取引はすべて不招請勧誘を禁止するといわれ困惑を隠しきれない。一足先に不招請勧誘が禁止されたFX取引は「為替」という特異な商品ということもあって、その後も順調に伸びている。だが、商品先物取引にそれが導入されたら、どうなるか。いわずもがなさらに市場の衰退は避けられないだろう。
なぜならば、市場流動性の担い手である個人投資家の獲得が根絶されてしまうからだ。これまで登録外務員が一手にその役割を背負ってきた。不特定多数の多くの人たちに商品先物取引の存在を知らしめ、その中から適合性の原則に適った人を選び、取引を勧める。契約に至るまでには人知れぬ苦労があったものである。新規開拓のベースとなる「探す」という苦労から解放されることになればよいが、外務員不要論に発展する懸念も生じる。
先物取引は証拠金という比較的少額の資金で取引に参加できる。そして期日がきたら決済して取引を終了する決まりがあるので、相場に負けた顧客は市場から去る。その補充を新規顧客の獲得で補ってきたのが、これまでの商品先物業界であった。
委託者保護を目的とした勧誘規制の強化で、まず再勧誘が禁止された。それから6年、業界はジリ貧を続け取引員は相次いで市場から離脱した。そして、今回の不招請勧誘の禁止と業界存続の危機が迫っている。
何としても、それを阻止したい。初回投資金額以上の損失を出さない商品設計が求められているのだが、先物取引をベースにした損失限定取引となると証拠金の大幅増額は避けられそうにない。いま人気の東京金は丸代金換算で1枚360万円ほどする。それが13.5万円で取引できる。証拠金倍率は26倍になる。先物取引の最大の魅力であり、怖さの源でもある。それを135万円に引き上げたらどうなるか。証拠金倍率2.6倍。古参外務員は「それは先物取引ではない」と騒ぐに違いない。
市場の値動きが荒くなり、1日で証拠金が飛んでしまうような動きが続いた08年当時、「こんな時は1枚30万円以上預らないと勧められないだろう」と外務員に話したら、「先物取引の面白みがなくなる、反対だ」と即答された。
初心者には高額証拠金でリスクをそれなりにカバーするのは当然だろうが、相場の怖さを知っている経験者には割安な証拠金で好きなように売り買いできることが、最高のもてなしなることも確かだ。 |