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再逆転勝利
沼野 龍男
取引員が立替払いした委託者の損金を請求した第一審の判決を不服として委託者が控訴し、08年1月、札幌高裁で逆転勝訴。これを不服とした取引員が最高裁に上告し、本年3月30日再逆転勝訴したもの。
(1)本件取引の概況。05年11月頃から委託者(当時は見込み客)にアプローチ。先物取引の仕組みや相場変動によるリスクなど外務員に課せられた説明義務を果たし、これに関する書類の交付にも手落ちはなかった。同年}11月23日、委託者自筆の口座開設申込書を受領、それには昭和16年生まれの男性で、先物取引は未経験だが株式はそれなりの経験があり、投資可能額は6000万円等が申告されていた。翌11月24日、営業担当管理課長が同委託者に電話し、理解度等を再確認した。その後「先物取引の危険性を承知した上で、私の判断と責任において取引を行うことを承諾した」との文言が記載されている「約諾書および通知書」に必要事項を記入して記名捺印している。担当外務員は情報提供を続けた(外務員の相場観は買いだった)。約3週間後の同年12月12日、顧客から投資可能額6000万円の1/4に相当する1500万円が振り込まれ、東京金先限200枚の買い注文があり実行された。ところが翌13日、ストップ安で寄り付き、翌14日以降全建玉を手仕舞いする方針となった。最終的に委託者に3139万円の損(預り証拠金を差し引いても1639万円)が発生したもの。
(2)争点(委託者の主張および高裁の判断)。取引員の外務員が、将来における金の価格について、東工取の金価格の高騰は異常であり、ロコ・ロンドン市場における金価格とは極端にかい離していたことなど、将来、金価格が暴落する可能性があることを示す事実を故意に告げなかったことは、消費者契約法4条2項に定める「不利益事実の不告知」に当たるとして契約の取消しを主張した。札幌高裁は、将来における金価格は消費者契約法4条4項1号にいう「目的となるものの質」に当たり、かつ消費者である委託者の本件契約を締結するか否かの判断に通常影響を及ぼすべきものであるから、同2条本文にいう「重要事項」に当たるとし、ロコ・ロンドンとのかい離情報を故意に告げなかったことは契約取消しに値すると断じていた。
(3)最高裁の判断。将来の金の価格は「重要事項」に当たらないと解するのが妥当であるとして、札幌高裁の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があると断じた。よって、札幌高裁判決中の取引員敗訴部分を破棄するとともに、委託者の主意的請求(消費者契約法違反の主張)を棄却するとした(最高裁第三小法廷、5裁判官全員一致)。
所感。そもそも札幌高裁の判断には偏向があり、誤りであったと思う(08年7月7日付本欄、「札幌高裁判決に異議あり」で指摘)。この度の最高裁判決は至極妥当なもので、公正と正義が保たれたと感じている。
時間を浪費したようだが、先物取引の商品価格に消費者契約法4条2項の適用がないことが最高裁で明示されたことは業界にとって大きな勝利といえる。 |