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出来高の呪縛
福島 恒雄
 価格は需給によって決まる。1枚より10枚、10枚より100枚と取引数量が多いポジションに価格は引っ張られる。だが個々の委託者にとって、同じ100万円の資金で1枚建てるのより、10枚建てられる方が投資家として有利なのかというと、そういうわけでもない。それはあくまで投資効率であって、投資そのもののリスクを軽減するものではない。リターンとリスクは同等という投資の原理原則に変わりなく、レバレッジは投資効率を高める反面、損益の幅を増幅させる。
 例えば、丸代金100万円で1日の値動きが1万円の商品を100万円で取引すれば1日の損益は1万円、1%の損益になる。これを10万円(つまりレバ10倍)の証拠金で取引すると1日の損益は投下資金の10%となり、証拠金が5万円(レバ20倍)となると1日で投下資金比20%の損失か利益が発生する。また、丸代金100万円が200万円になった場合、1日の値動きが単純に1万円から2万円になるとして、証拠金を10万円に据え置くとレバは20倍となり、投下資金損益は20%になり、レバを10倍に維持して証拠金を20万円とすると1日の損益も投下資金比10%ということになる。利益の可能性のみを考えれば、レバは1日の値動き1万円に乗じる係数が大きくなるのであるから大きければ大きいほどいい。
 しかし、利益と同等に損失の可能性を意識すれば、自身の損失許容範囲と投下資金額とレバレッジ、ポラティリティを考えなければ到底投資などできないはずである。
 ウェプ系のデイトレードには、弱小投資家の一発屋、鉄砲屋も多くいるといわれるが、実際、相場が激変した時などは、委託者が身の丈に合わない取引を行った結果として損失を被り、無担保未収金として商品取引員の経営に重く圧し掛かってくる現象がまま発生することになる。投資の原理原則としてリターンと揖失は表裏一体で、全く可能性があることを委託者に認識していただくことは委託者保護の視点からみても重要であることは言うまでもないが、逆にこのことは、商品取引員の経営、財務が抱え込まざるを得ない委託者リスクをいかにマネージメントするかということに直結する重要な課題であることも意識すべきだ。
 確かに、少額の資金で取引できるのは先物取引の特性であり、商品相場など全て一発勝負、短期決戦、丁半博打と割り切るデイトレーダーだけが顧客ならそれでいいだろう。しかし、勧誘規制が厳しくなり新規顧客の獲得が難しくなる中で、商品相場を楽しむ余裕のある洗練された投資家で、末長くお付き合いがでさる委託者をどれだけ確保できるかが商品取引員の経営に大きく影響するはずだ。
 証拠金は自由化となっている。ボラティリティとレバレッジのバランスを念頭に置いた委託証拠金額の独自設定など、委託者が短期間に疲弊し、消えていくことのない環境の整備こそが個々の業者が競争すべき課題であり、当業界が生き残るための基本的考え方ではないだろうか。今、当業界が求められているのは、出来高の呪縛から脱却する発想の転換だと思っている。
(週刊 先物ジャーナル 2010年3月15日 1030号 掲載)

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