前号へ  次号へ               


ファンドと銀行の関係
杉江 雅彦
 去る1月21日に突然、オバマ米大統領が新金融規制案を発表した。その内容を知った証券界や商品先物市場が、相場暴落という形できびしい反応を示したことは周知のところである。
 それもそのはず、新金融規制案によると、商業銀行は預金者などの顧客と関係ない業務は禁止すべきだという立場から、銀行にファンドなどへの融資や投資と、自己勘定による取引を禁止することを提案しているからである。
 というのも、一昨年来の米国発金融危機の原因の大きなひとつが、銀行による高リスク取引の野放しにしたことにあるとの認識を、オバマ政権が持っているためだ。この新規制案の発案者は、経済再生諮問会議の議長であるポルカー元FRB議長であり、オバマ大統領も「ポルカー・ルール」であると声明している。
 当のポルカー氏は、上院でこう言い切った。
 「銀行が自己勘定取引をやりたいのなら、銀行免許を返上しなさい。逆に銀行であり続けるのであれば、ルールの範囲内で行動すべきである」
 もともと米国では、1929年以後の大恐慌の原因のひとつが、銀行が株式を中心にリスクを取る業務に深入りしたことにあるという認識から、グラス・スチーガル法が制定されて、銀行から証券業務を取り上げてしまった。それを崩したのがクリントン政権で1999年のことだった。
 もし、今回のオバマ提案が法制化されると、グラス・スチーガル法時代に逆戻りすることになる。当然ながら、ウォール街は大反対である。株式や高リスクの証券化商品を銀行が扱えなくなるし、融資・投資先からファンドを除外することになれば、原油や金などの大型先物商品も大打撃を受ける。
 オバマ政権は、この新金融規制をヨーロッパや日本にも適用させようとしているが、先日のG7でもはとんど関心を呼ばなかった─というよりも抵抗が大きすぎて議論できなかったし、日本の大手銀行は憶病でリスクを取りたがらないから、影響は小さいだろうとも考えられる。
 原油や金の先物市場では、この2、3年来ファンドの資金力に振り回され続けてきたから、もし新金融規制が成立すれば、ファンドは銀行から融資を受けられなくなり、その分、先物市場の勢いは殺がれるだろう。逆に、従来のような関係者中心の、需給関係を反映したマイルドな相場形成に戻るとも予想される。
 いずれにせよ、ファンドの腰もまだ定まっておらず、しばらくは様子を見る姿勢が必要だ。
(週刊 先物ジャーナル 2010年2月22日 1027号 掲載)

inserted by FC2 system