|
金急落に思う
高橋 伸幸
5日の東京金相場はサーキットブレーカー(CB=相場の急変による立会の一時停止)が発動して前日比170円超の急落に見舞われた。金の下げは貴金属市場全般に波及し、白金も前日比300円近く下げた。
金の170円はかつてのストップ幅の1.7倍、売買差金では1枚17万円になる。取引証拠金額は1枚当たり13.5万円なので多少の余裕をもって取引していても足(預けている金額以上の損失)の危険は避けられない。デイトレードに励んでいる先物実践家のH氏は「自己玉に変化がない、委託の買いポジションは維持されている。これまでの上昇過程で大きく利益を出しているので大丈夫なのだろう」と分析、自身もショックが冷めたら再度買い出動とみていた。
CBの良さは1日で因果玉が整理できることにある。板寄せ取引の場節商いのように何日もストップに張り付いて手仕舞いしたくても出来ないということがなくなった。問題はその値幅だ。1日にストップ2、3回分に相当する動きが瞬時に訪れたら逆ポジションの人のショックは大きい。
人気が過熱した市場には時たまみられる現象で、相場を張っている以上は逃げることが出来ない。ロスカット・オーダー(損切りの逆指値注文)も通常は30円か、50円くらいで入れているのが普通と思えるので、いきなり170円安に見舞われたら証拠金管理もままならない。
11年1月から商品取引法が施行する。政省令の細則は大詰めを迎えているころだが、不招請勧誘の禁止にふれる「初期の投資金額以上の損失をださない」方法についてはまだ明確な回答が得られていない。ロスカット注文がすべてを解決できないことは業界幹部も認識していたわけだが、現行の証拠金制度(高くてもレバレッジ25倍程度)を活かして、尚且つ顧客の利便性を尊重していかなければならない。先物ポジションをオプションで100%ヘッジすれば、初期の投資金額をまるまる失うことはないだろうが、顧客のコスト負担はばかにならない。利便性を欠く最大の失態になる。それ以上に、相場の醍醐味をなくす。
先物取引にかかわらず、株式投資やFX(外国為替証拠金取引)にしても、相場の世界に入ってくる人は少なからず儲けたいという気持ちを持っている。現物投資に物足りなくなった人は株式の信用取引に手を広げるし、FXでもレバレッジ倍率の高い資金効率のよいところに流れていく。そして新たな投資媒体としてCFD(証拠金による差金決済取引)も注目されている。商品先物取引だけを規制でがんじがらめにするのはいかがなものか。市場の流動性をこれ以上下げてはならないのだから、ここは行政の大胆な市場振興策に期待する以外にすべがない。 |