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登録外務員がいなくなる日
沼野 龍男
 地方都市の元支店長であったI氏から懐かしい賀状が届いた。「介護の仕事について1年がたちました。将来どうなるか分かりませんが、今は覚えたり慣れるのに精一杯です」と書き添えられていた。
 彼は先物業界30年、7、8人の部下と共に頑張ってきた男。支店全体で5億円くらいの預かりを常に維持していた。営業会議では、預かりの割りに手数料が少ない(手数料化率が小さい)と責められたり、利益金の支払い(出金)が多いとも指摘されていたらしい。顧客志向の強い彼はそんな指摘にも応じることはなかったが、数字を追及する営業本部からは睨まれていたようだ。結果的に顧客が損をすることがあっても、顧客と共に相場に取組み、抜群の信頼を得ていたのだ。部下たちも彼を立派な上司として敬い、知識や技術の習熟に日夜奮闘してサービスの向上に努めていた。リストラの一環で同支店が東京に統合されることになったが、地元出身者ばかりで移動できなく己むなく同じ地区にあった他社に移籍した。しかし数年後、その店舗も事業規模縮小のため閉鎖されるに至った。永年寝食を共にした彼らは涙を飲んで離散した。
 50歳を過ぎて転職するとなれば目先、介護の仕事しかなかったようだ。あれだけお客様の立場に立って相場と戦ってきた彼だから、第二の人生も立派にやり遂げるだろう。
 新入社員時代の「御用聞き型セールス」にはじまり、入社2、3年目の「提案型セールス」を経て、お客様の総合的な資産管理をアドバイスできる「コンサルティングセールス」にまで成長していた商品業界の貴重な外務員たちである。主務省の方針にいとも簡単に迎合し、手間隙かけて育成した何よりも大切な人的資産を捨て去った取引員経営者たちが怨めしい。
 加藤振興協会会長が年頭所感で「商品先物取引知識の普及は、2011年から不招請勧誘の禁止や再勧誘の禁止のなかで、登録外務員に依存することはきわめて高いリーガルリスクを負うことになる…(中略)…今後は、取引所を中心にした普及啓蒙が必要になる」と述べている。部外者の評価的理解のようで残念である。
 「啓蒙」と「勧誘」の言葉の適用範囲、具体的な行動領域をもっと明確にする必要があろう。身を賭して、最後の最後まで執拗に主務省と交渉してもらいたい。でないと、50数年間続いてきた外務員制度に実質的にピリオドが打たれることになる。
 取引所を中心に、新聞やテレビ、ネットを通じてPRし、お客様からお声がかかるのを待つ。それも他方で必要なことだが、それだけでは「百年河清を俟つ」となろう。
(週刊 先物ジャーナル 10年2月1日 1024号 掲載)

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