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水素エネルギーと石油の運命
杉江 雅彦
 久し振りに新聞紙上で、サウジアラビアのヤマニ元石油相の名前をみつけた。日本経済新聞の記者によるインタービューに登場したのである7月4日付日経朝刊)。
 ヤマニ氏といえば、1962年から86年まで石油相をつとめ、その間二度の石油危機に際して、OPEC(石油輸出国機構)の中心人物として重要な役割を担った人物である。そのヤマニ氏がインターピューの中で、「時代は技術で変わる。石器時代は石が無くなったから終わったのではない。青銅器や鉄など、石器に変わる新しい技術が生まれたから終わった。石油も同じだ」と答えているのに筆者は強い印象を受けた。
 まことにその通りだろうと思う。石油価格がひと頃にくらべると大きく下落したにもかかわらず、ガソリンなど石油製品の消費量は伸びない。在庫もふえる一方である。その理由として考えられるのは、消費者の石油価格高騰に対する危機感が消えず、なかでもガソリン消費量が大きい自動車を中心に、石油に替わる代替エネルギーの開発が加速してきたことである。それも、ハイブリッドやバイオ・エネルギーといった石油の消費量を減らす内容のものにとどまらず、まったく石油を必要としない燃料電池を使った水素エネルギーの開発に、各国が本腰を入れはじめたからである。
 もちろん、3年か5年先に燃料電池車が街や高速道路を走る姿を予想するのは早計に過ぎる。自動車の値段や一回の充電で走れる距離、水素スタンドや家庭の充電設備などのインフラの整備など困難な課題がまだまだ未解決だからである。しかし、ガソリンの価格が上がるから自動車が無くをるのではない。石油を使わない自動車が最後に残ると発想すべきだろう。
 最近の石油先物市場の動きをみていると、かつては我がもの顔で価格を吊り上げていたヘッジファンドなどの投機筋が市場に出動しても、「笛吹けど踊らず」で相場が思うように動かないのに嫌気がさして、資金が市場から流出しているようにもみえる。それとも、投機筋も将来の石油の運命を深読みしての戦略なのだろうか。
 それともうひとつ。エネルギー関連の先物市場の規制を放置してきた米国のCFTC(商品先物取引委員会)が、漸く重い腰を上げて、年金基金やETF(上場投資信託)とへッジファンドの投資残高を毎週公開して透明性を高めるほか、持ち高制限を課すなどの措置を導入することを明らかにした。このこともファンドにとっては面白くないだろう。ひょっとすると、もうファンド主導の石油相場高騰はみられなくなるかも知れない。
 ヤマニ元石油相の発言からもうひとつ。「多くの原油を産出するペルシャ湾岸地域に新しい原油市場を創設するのが重要だ」。かつてOPECのリーダーだったヤマニ氏の本音にちがいない。
(週刊 先物ジャーナル 09年7月27日 999号 掲載)

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