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先物業界を買う
市場経漬研究所代表 鍋島 高明
「日経ヴェリタス」によると、日本一の個人投資家、竹田和平氏は上場113社の大株主だという。日経会社情報や東洋経済の会社四季報に「竹田和平」の名が113カ所出てくるということだ。竹田氏は目先で売った、買ったやる人ではない長期方針でじっくり腰を落として買うタイプである。113銘柄の中に、商品先物会社が3社含まれている。以前より1社減ったとはいえ、竹田氏はいまだ商品先物業界を見限ってはいない。
十年前、自ら創設した山梨商事を小林洋行に売却して先物業界を去った霜村昭平氏は77歳の今も、相場を張りまくっている。業界のピーク時に会社を売ったことで、「さすが相場師、山梨は業界の体たらくを見越していたのだろう」とますます氏に対する評価が高いが、氏に言わせると、「後継者がいなかったから」。霜村民は、死ぬまで相場はやめないという。
霜村氏と同じ山梨県出身の坂本嘉山氏。「100億円稼いだ男」として雷名轟き渡るが、セントラル商事会長として積極策をとり続けている。三菱商事フューチャーズの対面営業部門を買い取り、新社長を迎え、体制強化に努める。逆風の今こそ、攻めに出る時と心得、相揚師特有の嗅覚を働かせる。前3月期決算で黒字を計上した数少ない企業である。
商品先物業界のリーダーとして自他ともに認められてきた人物が法規制に耐えかねて退場するニュースを聞くのは淋しい。船が難破した時、最後に脱出をするのが船長の役目とされているのに、早々と荒海を逃れ陸に上がった人の姿は醜悪である。
「蝮の本忠」こと本田忠氏は、阪神大震災を機に活動の拠点を郷里の長崎に移した後も、第一商品の大株主として心は常に先物市場にある。かつて吉原グループの総帥として業界シェア20%を勝ち取った本田氏は、傘寿を過ぎた今も、相場を楽しみながら、商品先物業界の再生の日を確信している。本田氏も霜村氏も坂本氏もいずれも相場師兼経営者である。
時代の底流を見透し、危険を冒す相場師たちは閑古鳥の鳴く商品先物を決して売ろうとはしない。古来「閑散に売りなし」の相場金言を実地に体験しているからであろう。人間に冒険心、投機心がなくなった時、市場は老いる。司馬遷の「史記」に投機師列伝(貨殖伝)が収められて以来、2000年以上に亘って書き継がれてきた投機師の群れが平成の御代に忽然と姿を消すというのだろうか。投機の対象が多様化しているのは事実だが、投機の象徴ともいうべき先物を除いた投機市場など考えられない。 |