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「誠実かつ公正の原則」
沼野 龍男
 「商品取引員並びにその役員及び使用人は顧客に対して誠実かつ公正にその業務を遂行しなければならない」(商取法第136条の17とある。公官庁、民間企業のいかんを問わずあらゆる仕事に携わる組織や個人にとって、この原則を逸脱しても許される業務はないはずだ。
 すなわち、万国の万人が営む仕事を遂行するとでの普遍的な規範であろう。この条文が色あせている(ことさらにいう必要がなく、至極当然のこととして守られている)か、ピカピカに光っている〈言われない日がない)か、格差もある。公務員や医師がこの原則に反した場合にはマスコミで取り上げられニュースになる。最近は多すぎて辟易するが。
 我々の業界にあって、その求められる姿勢が個人の資質に依存するのか、所属する組織が醸成する規範にコントロールされ、その原則が保持されているのかによって大きく異なる。組織全体、トップから末端まで行き渡っていれば、単に商売上の顧客に対するだけでなく、社内の人間関係、地域とのコミニユケーションなど広範囲な集団活動に活かされ、その組織や個人の評価は高く、自然に広まっていくもの。
 逆に、集団規範がその原則をないがしろにするような場合は、些細なことにも信頼関係を欠き、信義に反した表面的で猜疑心に満ちたつながりしかない、もろい集団維持しかできていない。また、そのような悪しき評判は残念ながら何十年たっても解消されることがない。エンロン事件の教訓である「情報の非対称性の問題」、すなわち、庄倒的に情報の質量に勝るプロ側(取引員側)に説明義務があり、それが十分に(顧客が納得したレベル)果たされてはじめて顧客の自己責任に移転する。これも正に本原則の実行であろう。
 「人としての在り様、人間としての生き様」を立て札に書いたのが、この条文だろう。
 この条文の次(商取法第136条の18)に、「不当な勧誘の禁止」というのがある。第1号から第5号まであり、第5号では委託者保護に欠け、取引の公正を害するものを別途主務省令で定めるとして、省令第46条(禁止行為)で11項目を定めている。取引員が役所の検査を受けた結果として、処分された場合のほとんどは「不当勧誘」として、この辺りの条項に抵触したものである。
 成熟した取引員にあっては、本件禁止事項の如く、微に入り細に入り逐条されなくても、「誠実かつ公正の原則を貫く」とだけあれば十分であろう。我々は自らこの原則の適用を拡大するとともに、屈辱的勧誘規制からの解放行動を起こそうではないか。
(週刊 先物ジャーナル 09年6月1日 991号 掲載)

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