第 293回

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米良 周              
 1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 先物ジャーナル社・代表取締役。09年同社退社
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)。近著(08年6月)「商品先物取引の手引き」(同友館刊)がある。

「大豆、プラチナ」=中国主役商品、復調際立つ
商品はデカップリング?
  
 「中国、米国大豆価格を押し上げる」英紙ファイナンシャル・タイムス(FT、20日付)商品棚の見出しだ。
 「米産大豆相場は3月はじめに比べ、およそ33%高をみせている。中国の強い需要とアルゼンチン、ブラジルの生産障害が重なり合った結果だ」
 ●大豆相場は19日、コンサルタント会社のインフォーマ・エコノミックスが「米国の期末在庫は米農務省が先に発表した1億3000万プッシュルという予測をかなり下回る7700万プッシェル」と予測し、供給懸念が強まって、8ヵ月振りの高値を付けた(CBOTの7月限は一時1ブッシェル11.67 1/2ドル)
 ●米国農家の作付け進捗率は前週の14%から25%に高まったものの、例年この時期の長期的平均44%をかなり下回る。
 ●油糧種子の最大手加工業者、プンゲによると、中国は食肉部門の拡張に合わせるため、輸入需要は今年も強く、国内在庫を積み増す必要もある。ブンゲ・ノース・アメリカのチーフ・エグゼクティブ、カール・ハウスマン氏は「中国は今年中はもちろん、将来に向けても主要な買い手であり続けよう」と述べている。
 プラチナにも中国ファクターが働いている。
 FT商品欄の記述を引用してみる。
 「プラチナ相場はオバマ大統領が、米車の廃気ガス排出基準の厳格化方針を打ち出したことを受け自動車媒体部門の需要増を見込んで上がった」
 「18日に公表された広軌な調査で知られるジョンソン・マッセイ(JM)報告書では『中国のジュエリーメーカーは09年第1四半期に強い購入意欲を示しており、09年のプラチナジュエリー加工需要は″大きく上向く“だろうと指摘している』」
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 JMの報告書「Platinum 2009」は18日に公表され、その日本語要約がJM広報代理店トライメディアを通じ、小社のファックスに送られてきた。
 「バラジウムジュエリー需要、中国市場のリサイクル減少とジュエリー生産量拡大で、増大を予測」と題する件りから、中国の動向を抜き出してみる。
 「ジュエリー需要は07年の15.5トンから08年は20.2トンへと拡大した。古いPd950(品位95%)の売れ残り在庫の再加工が減り、Pd950の在庫はほとんどなくなった。一部のメーカーがプラチナや金の高騰を受け、08年上半期にその代替としてパラジウムの使用を始めた(08年後半プラチナが下落するとこの代替需要は減少)」
 プラチナが高騰すれば中国のバラジウム代替需要が増えてその頭を抑える─両者間の平準化作用の中接に中国が立つという図式が定着したようだ。
 ここで、JMの報告書の向こう6ヵ月の価格予想を紹介する。
(プラチナ、950〜1350ドル)
 「自動車触媒用や工業用プラチナの需要は09年も低水準にあるが、中国のジュエリー業界や投資家がその落ち込みを相殺する形で積極的に購入している。経済環境が好転すれば、向こう6ヵ月間に1350ドルの高値を付ける可能性がある。特に目立った改善がみられなくても、アジアの現物買いや長期的には良好なファンダメンタルズによって支えられ、950ドルを割ることはあるまい」
(バラジウム、180〜280ドル)
 「自動車触媒用需要は08年を下回ると見込まれ、工業用需要も停滞が続く。投資、ジュエリー需要は増加の可能性があるものの、09年の総需要は減少すると予想される。生産も落ちると見込まれ、ロシアの国家在庫の売却がなければ供給不足となる可能性もある。だが、JMはロシアの売却は十分あり、供給過多になると予想する。相場は投資家の動向がカギ。商品投資が活発化すれば280ドルまで上がる可能性もある。投資家心理が弱ければ180ドルの下値もありうる」
 JM報告書発表を受けて、FT(19日付)解説記事には次のようなコメントがある。
 RBSのステフェン・ブリッグス氏=「最悪の事態はこと需要に関しては相場に織り込まれたというのが我々の見解だ。JMの価格予想はさらなる底を見込んで比較的控え目にみえる。RBSはプラチナは2010年第1四半期までに1500ドルを見込み、バラジウムの2010年平均値は350ドルを予想している」
 HSBCのメタルアナリスト、ジェームス・スティール氏=「プラチナ、バラジウムともに自動車触媒、産業用需要はさらに落ち込む。世界の自動車生産は問題含みだ。米国での値引きもこれまでのところ効を奏していない」
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 3〜4月と中国の需要増を見込んだ銅、アルミなど非鉄金属が強張った。中国の買い控えでその強基調も一服模様。
 中国に愛された商品が上がり、手控えられると下がる。リーマン破綻(08年9月15日以降、信用収縮の局面で商品は総崩れの様相を呈した。「どっこい中国の需要は生きている」。09年2月を底にした国際商品の復調の背景には中国の存在がある。
 「中国、ブラジルと貿易のきずな強める」(FT、20日付)
 「中国は19日、ブラジル産鶏肉の輸入制限を解き、牛肉輸入を増やすことで合意した。同時に北京はブラジル政府のコントロール下にある石油会社、ペトロブラスへ最大100億ドルを融資する。中国はブラジルの貿易相手国としてこの1〜4月合計で米国を上回る最大手となっており、今回の連係で2大途上国の関係がさらに密なるものとなる。ブラジル当局は18日、FTに『取引の決済通貨を米ドルから中国元・ブラジルリアルに移行することを近く両国中央銀行間で協議することになる』と述べた」
 世界金融危機下に消えていた”デカップリング論“。
 商品から再登場となるのか。

 (週刊 先物ジャーナル 09年5月25日 第990号 掲載)

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