前号へ  次号へ               


ケーススタディ 怯える営業−再勧誘の禁止
沼野 龍男
 外務員Aの見込み客B氏は資力もあり、他社を通じて取引している。相場事情にも精通し、5年以上の経験者で、適合性の判定は良である。B氏はAの訪問には応じてくれるものの、すでに他社と取引中であり、Aの熱心さは買ってくれているが、契約は断られている。Aは定期的に資料を持参してB氏にアプローチを継続していた。約1年が経った頃、B氏が「君の熱心さ、真面目さには負けたよ。口座を開いてやろう」と応じてくれた。
 早速、管理部の担当者がB氏に面談し、その結果をしかるべく会社に報告した。概ねAの申告と同じであった。会社での判定会議の結果は「受託できない」であった。ポイントは他社で取引中であり、「これ以上間口を広げる意志ないと断っていたが,Aがあまりにも熱心にくるので、彼の誠意を買ってやることにした」とのB氏の発言だった。
 将来何かあった折に、この動機の部分が弱点になると判断し、危うきに近寄るべからずとなったようだ。これは対面営業の某取引員の実例である。知人の歩合外務員にこの話をしたところ、彼も「うちでもダメだろう」との返事だった。
 さて、再勧誘禁止のガイドラインによれば、「一度契約を締結しない旨の意志を表示した者」に対して、その後再び勧誘を行うことを禁止している。不招請勧誘もほぼ同様である。本件例のB氏の場合、経験者でもあるから「啓蒙活動」から始まる必要性もないが、受託サービスの差異を知ってもらう活動まで否定されるとは思われない。すなわち、取引員ごとの情報サービス(情報誌紙、分析端末のレンタル、模擬売買など)の差、手数料の割引サービスの差異、受託時間(夜間取引も可能か否か)の差、その他現受けした商品を必要とあらば実需に転売あっせんできる能力、等々である。
 B氏をその気にさせたA君の「熱心さ、真面目さ、誠実さ」など、正に対面営業に不可欠の人間性であろう。加えて、前述した取引員がもつ技術やノウハウで総合的な知的情報サービス業務が完成するのではないだろうか。
(週刊 先物ジャーナル 09年5月4日 987号 掲載)

inserted by FC2 system