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へッジとポートフォリオ
杉江 雅彦
 商品でも証券でも、リスク回避にはふたつの大きな考え方がある。そのひとつがヘッジであり、もうひとつはポートフォリオである。商品先物取引の世界では、どういう訳かリスク回避手段はヘッジしかない、と考えられてきたフシがある。ヘッジには買った商品の値下がりリスクをヘッジする売りヘッジと、反対に売り契約をした商品の値上りがりリスクをヘッジする買いヘッジがあって、いずれも先物で行うことができる。それはそれで十分に機能する。
 しかし、もうひとつのリスク回避手段であるポートフォリオは、ほとんど利用されていない。ポートフォリオというのは、多数の銘柄に分散して売買したり保有することで、ポートフォリオという言葉の語源は、幅の薄い書類カバンを意味するのだと聞いたことがある。幅の薄いカバンには大きな荷物は入らない。もっぱら株券や預金通帳といった金融資産しか入らない。そこで多数の資産が入っているカバンというので、ポートフオリオという言葉が転化したらしい。
 それはともかく、ポートフォリオすなわち運用資産の分散投資は、ある資産が値下がりしても他の値上がり資産が入っていればリスクは帳消しになる、という点がポイントである。証券投資の場合にはこのポートフォリオがきわめて有効だというので、ファンドや機関投資家はもちろんのこと、個人でも相当の資産を運用する人はもっぱらこれを使っている。
 ところが商品投資の場合は、滅多にポートフォリオという言葉にお目にかかったことがないのはどういう訳だろうか。考えられることとしては、わが国の四取引所の上場銘柄を合計しても、せいぜい30銘柄強にすぎないという点があげられよう。これに対して上場証券は数千銘柄にもなる。
 しかし実際問題として、投資家が数千もの銘柄を運用することは管理上も無理があるため、せいぜい数百銘柄止まりであるにちがいない。それにしても商品取引所の上場銘柄はすくなすぎる。前回の本欄で商品取引所の上場戦略について述べた際、利用者のニーズを見極めて長続きする商品を上場すべきだと主張した。しかし、投資家によろこばれる商品ならば、もっと上場銘柄の数をふやすことも、ポートフォリオというリスク回避手段を有効化するためには必要だと思う。
 もっとも、先物商品売買にポートフォリオというストラテジー(戦略)を頭に入れることは、現状でも可能なのではないか。証券会社にはかならずストラテジストという専門家がいて、投資信託やファンドの組成を指導している。商品取引員も単品の狙い撃ちから脱皮して、もっとストラテジーを重視すべきだ。
(週刊 先物ジャーナル 09年4月27日 986号 掲載)

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