|
リスクを愉しむ
杉江 雅彦
過ぐる1月19日付の本紙上で、「めらの目」氏が拙著に言及され、「リスクを愉しむ」の書き手の一人として推薦して頂いた。実は別誌で「マネーとリスク」というタイトルの連載をはじめたばかりである。これからは、できるだけ機会を見つけて「リスクを愉しむ」文章を書くことを心掛けよう。
それにしても、日本人の多くはリスクを取ることにきわめて慎重である。かなりの資産家や高額所得者でも結構、無リスク資産である銀行預金や郵便貯金に資産ポートフォリオの比重を多くかけているのが目立つ。近年は大手銀行もプライベートバンキングと称して、もっぱら高額所得者や資産家の預金を取り込む部門に力点を移し始めている。
つい最近、三井住友銀行が鎌倉市内に支店を開設して、富裕層の預金獲得に乗り出したが、これでメガバンクが揃って鎌倉に支店を持ったことになる。なにしろ鎌倉にはわが国の名だたる大企業の役員やそのOB、あるいは著名な作家や芸能人などが多く住んでいるので、彼らの資金をメガバンクで囲い込もうと懸命になるのだろう。
ところで、プライベートバンキングといえばむしろ欧米の大手銀行の存在感が大きい。これらの銀行は預金よりも、株式や債券などのリスク資産を保有させる戦略を優先させているようである。
筆者の親しい外国人のひとりにUBSのプライベートバンキング部門の責任者がいる。数年まえにスイスのルガノ湖畔で彼に会ったときも、ヨーロッパの富裕層は積極的にリスクを好むとまではいかないものの、資産をふやすにはリスクを避けることはできないことを熟知している、と語ってくれた。
「商品先物に興味を持つ顧客はいるのか」と尋ねたら、くだんの友人は「ときどきはお目にかかるが、むしろ商品先物をそれとなく組み入れた高利回りの金融商品になら関心を示す人は多い」との答えだった。筆者はこれまでにも、商品取引員会社の役員や営業幹部に、ローリスク・ローリターンの商品ファンドのような商品をもっと顧客にすすめるべきだ、と言ってきた。しかし、長い間ハイリスク・ハイリターンの先物商品に執着して経営を続けてきた商品取引員にとって、商品ファンドは低利益のため積極的に取り上げる気にはなれなかったのだろう。
それならば、営業マンに商品知識や相場観を徹底的に教え込んで理論武装させ、富裕層に的を絞ってアタックしたらどうだろう。メガバンクにならって、鎌倉に支店を開く商品取引員会社は現れないものか。 |