|
どこかおかしい
杉江 雅彦
ある中堅商品取引員から、ことし9月期の決算報告書が筆者の許に送られてきた。それをみて愕然とした。ここ数年の間に、手数料収入が異常なスピードで減少しているからである。
この取引員は営業姿勢は堅実、内部管理も徹底しており、業界でも“優等生”と言ってもよいほどの会社だが、その取引員がこの有様である。何が、かくも無惨な結果をもたらしたのであろうか、と考えてみた。
@顧客から先物取引=投機だとしても、嫌われた
A行政庁によってオーバーキル(締めつけ)されすぎた
B商品取引員自身が萎縮して、やる気を失ったこのいずれもが、そこそこは当っているだろう。それにしても、である。世界中が日本と同じなのだろうか。それは、断じてない。アメリカやイギリスなどの“先物先進国”はもとより、アジアの新興国でも結構、売買高はふえている。
アジアの中でも中国の躍進ぶりは、目を見張るばかりである。これは株式の話だが、今年になって上海証券取引所の売買高は、ロンドン、東京を抜き去って、世界第三位に躍進した。韓国でもソウル取引所の株価指数先物が、世界でもトップの売買高を続けている。
中国も韓国も、かつての昔は儒教国であり、そこでは、倫理観から投機が戒められていたはずである。それがどうだ、現代では嵐のょうな勢いで先物市場が伸びている。どうやら、先に挙げた三つの理由の中の@は、わが国でも通用しないと思う。
ある中堅商品取引員の話に戻ろう。
この会社は、すくなくとも筆者が見てきた20年間に、さまぎまな経営戦略を展開してきた。
まず、商品取引員の社会的信頼度を高める目的で、株式の上場を実現した。それによって社員の意識の向上も計れた。それと引き換えに、上場会社としての経費が格投に上昇して、経営を圧迫するようになった。
次に、経営の多角化のために証券業にも進出した。それまでは商品先物しか扱えなかったが、株式や債券の現物から先物までの品揃えが可能になった。なにぶん、証券には素人だったため、証券会社から多数の人材を雇用した。しかし、証券会社と商品取引員では“企業文化”がちがったためか、ほぼ全員が会社を去った。
証券業を監督する金融庁の規制がきびしく、社内にコンプライアンス委員会を設置して、法令遵守に懸命になつた。
それにもかかわらず、この有様である。大部分の商品取引員にも共通しているだろう。どこかおかしい。AとBが問題である。 |