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委託証拠金
福島 恒雄
委託証拠金が売買証拠金の10倍だったことは、外側から見れば会員優遇措置のように見えるが、値洗い制度により、取引の担保という意味では、一日の差損リスクがあれば十分という意味合いのほうが大きく、翻って、委託証拠金が売買証拠金の10倍だったということは、委託者は日々の値洗いをしない存在であることが前提にあったといえないか。委託証拠金の10分の9は、委託者と取次業者である商品取引員との間に設定された担保であり、このことは、迫証拠金が委託証拠金の制度であって、売買証拠金に無かったことからもわかり、「追証は現金に限る」時代があったことも、追証は取引員の委託者に対する値洗いリスクの担保的意味をもっていたことがわかる。
委託証拠金の半分の損失が発生することにより、委託者が取引員に設定した担保価値が半減しているから、その減少した担保価値を補てんするのが追証で、商品取引員としては、追証発生が委託者に対する与信の限界点だったことになる。現行の委託証拠金が商品取引員の手許で差替えが発生しているか否かで区分されるのと異なり、旧来の委託証拠金は、あくまで商品取引員と委託者の間のものであって、それは、商品取引員の委託者に対する与信の許容範囲を示す物差しだったのである。
手数料とともに証拠金が自由化されたことにより、このような商品取引員の委託者に対する与信という委託証拠金の機能に対する意識が薄くなり、限りなく売買証拠金、現行の直接預託取引証拠金、つまり取引所・清算機構に対する委託者の取引の担保というところにその存在価値が凝縮するところとなり、商品取引員は証拠金の運び屋でしかなくなってしまった。しかし、商品取引員が取引取次業者であることにかわりなく、委託者に対する与信行為自体は潜在的に残されているのであり、業務遂行上無担保で与信しなければならない状況になっているのであるから、流動資金が厳しくなるのは当然と言えば当然である。商品取引員としては委託者から余剰証拠金という形で取引証拠金基準額を上回る(それもかなり多額の)資金を預かり、清算機構に預託することで対処する以外にはないが、これがなかなか難しい。
委託証拠金が取引証拠金と名を変える前から、預り証拠金一杯々々に取引をする状態を善とする考えが深く根付いており、業界人誰もが疑いを持っていない。過去、主務省から過剰預託状態の委託者に対しては「返還遅延が疑わしい。すぐ返せ」という強硬な指導があったことも事実だが、取引枚数は、取引員の受取手数料、取引所・各団体の定率会費の基本係数であることから業界全体がこの考え方にどっぷりと浸かっており、身動きがとれないという現実がここにある。それは、相場が大荒れになり、どうみても臨増をかける場面であっても、「出来高が減る」という恐怖感から迅速に対処できなかったこと |