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差玉向かいは説明義務があるのか?
沼野 龍男
 今年7月の最高裁第1小法廷で、裁判官全員一致で「差玉向かいは説明義務あり」とされた。
 主たる理由は、差玉向かいには委託者全体の総損金が総益金より多くなるようにするために商品取引員において故意に、委託者に対し、投資判断を誤らせるような不適切な情報を提供する危険が内在することが明らかである。そうすると、商品取引員が差玉向かいを行っているということは商品取引員が提供する情報一般の信用性に対する委託者の評価を低下させる可能性が高く、委託者の投資判断に無視することのできない影響を与えるものというべきである。したがって、少なくとも差玉向かいを行っている取引員はそれを行っている商品につき受託前にその旨を説明すべきである。加えて、委託者との間に利益相反関係が生じる可能性が高いものであること、また委託者が、どの程度の割合で自己玉と対当する結果となっているのか確認できるよう、自己玉を建てる都度、その情報を委託者に通知する義務を負うべきだとした。
 他方、原審の東京高裁は委託者全体の総益金が総損金より多い時は商品取引員に損失が生じ、委託者全体の総損金が総益金より多い時は取引員に利益が生じる関係にある点では利益相反を認めうるが、取引員の自己玉と売付けまたは買付けの別を同じくする委託者については、取引員との間の利害が一致するのであり、前述の利益相反の関係は抽象的な委託者総体との間に生ずるものである。また取引員の自己玉と対当する玉を建てた委託者であっても、直ちに損失を被るものではなく、利益が生ずることもあるのであり、取引員が差玉向かいを行っていることは、委託者の投資判断に影響を与えるものではない。取引員は、差玉向かいを行っている場合でも、委託契約上、委託者に対し差玉向かいによって取引員と委託者との間に利益相反の関係が生ずることを説明する義務を負うものではない。としていた。
 さて、競売買による単一約定方式の「板寄せ」では、同一会員の同一数量の売りと買いとの申出は相殺して取引がなかったものとして処理される。この方法は単一約定値段による売買締結方法のうち、一番簡単で、かつ大量の取引に適している。「パイカイ付け出し」もその延長線上である。取引員は場勘対策上は、場面(ぱづら)は限りなくゼロにしておきたい。また利益相反でいえば、取引員が益勘定で委託者が損勘定の時、委託者が損切りしたくても相手がいない時、自己玉の仕切りで合落ちすることもできる。
 今日的な自己玉は委託玉と敵対しないことを最高裁にもわかって欲しい。
(週刊 先物ジャーナル 09年11月9日 1013号 掲載)

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