第 280回

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米良 周              
 1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)。近著(08年6月)「商品先物取引の手引き」(同友館刊)がある。

食料危機、いつか再び
韓国企業、マダガスカルでトウモロコシ確保策
   
 「ソウルの食料」
 英紙ファイナンシャル・タイムス(FT、11月20日付)1面の絵(写真)付ミニニュース解説欄の見出しである。
 「韓国のダイウ・ロジステックスはマダガスカルのベルギー全土の半ばに匹敵する土地を無償で借り、トウモロコシとバーム油を生産する。インド洋の島国は雇用の増加と引き替えに130万ヘクタールを99年の借地契約で貸す。ダイウは投資の目的はソウルの食料保障にある点を強調している」
 3面は「マタガスカルの農地リース」特集。
 記事ではダイウのマネジャー、ホン・ジョン・ウォン氏の「トウモロコシを植え、食料保障に役立てたい。食料はこの世では武器になりうる。収穫物は他国に輸出するか、食料危機の際には韓国に送る。対象となる土地は未開発で、マダガスカルにとっては農作業という雇用の場が広がるメリットがある」と述べている。
 農地開発に伴って道路、灌漑、保管倉庫への投資が見込める、とも指摘しているが、記事はネオ・コロニズム(新植民地主義)への懸念を強調している。
 「ダイウは収穫の大半を他国への輸出と韓国に送り出すとしているが、マダガスカルにどれだけ残るか不明。マダガスカルはWFP(国連の緊急食料援助機関)が、人口の3.5%に当たる60万人に援助している貧困国で、人口の70%は貧困ラインを超え、3歳児以下の50%が満足な食事を欠くため、発育障害にある。」
 FTは社説でも韓国企業は強欲と決め付けている。ただで土地を借り、耕作可能な土地の半分を差し出す代わりに雇用機会を与えるとはいうばくとした約束はなにごとぞ、と新植民地主義をとがめている。
 植民地主義の先輩としての苦言だろうか。資本と技術の提供とバーターでの農産物の確保という考え自体にはとがはないと思うがいかがなものか。
 人口密度が高い韓国。トウモロコシでは世界4位の輸入国でもある。自給できないとしたら開発輸入の手だてを考えるのが自然ではあるまいか。
 FTの特集ページには「アラブ諸国が土地を求める先兵」という囲み記事がある。
 サウジアラビア、アラブ首長国連邦、エジプト、リビアなどが土地を探す側、パキスタン、エチオピア、スーダン、ウガンダ、アンゴラ、カザフスタン、ウクライナ、タイ、フィリピンなどへ政府代表団が訪れているという。
 08年春にかけての食料の奪い合い時に比べて、食料品価格は大きく水準を訂正した。だが、新植民地主義論が出てくるあたり、食料危機騒ぎがいつまたぶり返さぬとも限らない。
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 「08年は経済予測家にとって不快極まる年となる。『なぜこんな事態が生じることをだれもわからなかったのかしら』。英国のエリザベス女王がロンドン・スクール・オプ・エコノミックスを今月訪れた際のご下問である」
 「イタリアのギュリオ・トレモンティ金融相は先週ローマ教皇ベネティクト16世」そこの危機を最初に予知した。1998年の文書で“規律なき経済、そのルールによって崩壊する”と述べている』と指摘、予測のハードルを上げている」
 女王陛下のご下問に答えるかのようにFT(11月26日付)は分析のページで「教皇を除いて、ほぼみんながみんなきたるべき金融破局を予測できなかったか」について解説している。
 エコノミストたちの予測大外れについて記事は6つの要因を指摘しているが、その中のひとつに今年前半のコモディティ・ブームの影響をあげている。
 「08年前半のコモディティ・ブームがもたらした家計と企業収益への圧搾は、ほぼ全員が予測できなかった。銀行がサブ・プライム危機からのダメージを償う前に非金融部門を痛めつけ、この秋に拡大した惨事を招来する要因となった」夏場までのインフレ要因(商品の急上昇)が、秋へかけてデフレ要因と化して結果として商品も急落するに至る道筋は経済予測のプロが読めなかった、とうことだろう。こでも昨今の筆者の「プロとはなんぞや」の疑問が生じてくる。
 別項でジム・ロジャース氏の考え方を訳出してみたが、経済予測のプロの誤りが投資銀行、ヘッジファンドの損失を招き、結局はしろうと衆の税金で穴埋めという成行きは皮肉そのものとしかいえない。
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 「大混乱を好むひとつの投資手段」
 FTのファンド運用産業週間レビュー別刷り特集(11月24日付〉の見出しだ。
 「CTA(商品投資顧問業者)はトウモロコシから日本円に至るトレンドに乗る」という絵解きでトウモロコシの写真が出ている。
 「CTAはほかのヘッジファンドの戦術があまた水漬かり状態にある中で、その真価を発揮しているようにみえる」
 「トウモロコシの下落、円の上昇といったトレンドに乗って、商品ファンドはパークレイ・グループのデータによると今年約11%の収益をあげている。パークレイ・ヘッジファンド指数に登録されている1220人の記録(10月31日現在)は19%の損失。S&P500指数は38%の損失」
 「CTAは市場のケオス(大混乱)時にこそ映える投資だと説くのはアセット・コンサルタントのニコラ・ラルストン氏。『例えば、1998年のロシアのデフォルトとロング・ターム・キャピタル・マネジメントが破綻した時、02〜03年のイラク戦争時、さらに今回(08年)の金融危機時など株価の変動性増大時に比較的好成績をあげている』と指摘する」
 記事では商品ファンド好成績の背景のひとつにCTAが流動性の高い投資対象に絞っていることをあげている。
 「値決めが容易で、離脱も簡単。かてて加えて、カウターパーティ(取引相手)リスクを軽減するクリアリング・ハウス(清算機関)が備わっている」
 ヘッジファンドの一員に分類されることが多く、そのヘッジファンド解約、破綻のニュースに押されて目立たなかった商品ファンドのひとり勝ち。
 商品の下落トレンドに乗る。しかも先物市場ではカラ売りが堂々と認められている。売りも買いも同等に収益の機会が狙える先物市場あってこそ、という商品ファンドの基本を確認させてくれる。
 日本の現物商品先物市場にはいま残念ながら流動性(値決め容易、出入り自由)を欠く。商品ファンドが自由に振る舞うことができる市場にはやはり個人玉の流入が欠かせない。
 大曲がりが跋扈するプロだけでは力不足である。

 (週刊 先物ジャーナル 08年12月1日 第966号 掲載)

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