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造船、建築も安心 日本に鉄鋼先物があれば
市場経済研究所社長 岡本 匡房
 いまから10年ほど前の話である。当時の日商協会長にインタビューしたことがあった。この時、「鉄鋼先物があったら、鉄鋼を使用する会社は大変助かるのではないか」と話したところ「その通りだ」と、膝をたたいた。
 ところが、翌日、電話がかかってきて「鉄鋼の先物取引の話は削除して欲しい」という。当時、「鉄は国家なり」として「コスト+適正利潤」を志向していた。需給で価格が決まるようになれば、鉄鋼メーカーが大反対し、大変なことになる。そこで、鉄鋼業界から文句がでないか危惧したからだ。
 いま、造船業界は3年先まで受注、空前の好景気に沸いている。だが、最近の鋼板価格高騰が大きく、場合によっては利金の大半が吹っ飛ぶどころか赤字に落ちる可能性もあるという。
 建築業界も同様だ。鋼材価格の乱高下には常に悩まされ続けている。これらの業界は消費財と異なり、契約時に受注金額を決め、その後の資材の変動価格があっても補償してもらえず、すべて業界のリスクとなる。もし、先物取引があれば、資材価格の変動をヘッジ出来、経営者は枕を高くして眠ることができよう。だが、そのような声はまったく出ていない。鉄スクラップが中部大阪商品取引所に上場されているが開店休業の状況だ。
 こんな中、海外で鉄鋼が上場された。これは頂門の一針となるかどうか、日本にとっても無視できまい。
 また、オーストラリアでは石炭を上場する動きもある。これに鉄鉱石、鉄スクラップが加われば、原料から製品まですべてへッジできる。
 日本の商品先物取引が衰退した原因の一つは昭和30年代、産業構造が「重厚長大」に代わったにもかかわらず、「繊維、国産農産物」などに固執、産業構造高度化の波に乗り遅れたことが大きい。最近は輸入農産物、石油、金属など世界と遜色ない商品を上場してきたが、一度離れた当業者は戻ってこない。
 新日本石油が東京工業品取引所に加入するなど若干の変化は見られるが、遅々たるものだ。「産業のコメ」鉄鋼が上場され、当業者がこぞって参入、商品先物取引が大発展する…というのは夢なのだろうか。
(週刊 先物ジャーナル 08年9月8日 954号 掲載)

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