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大証はデリパティブ市場で優位に立てるか
「日本橋の小網町から蛎殻町一帯にかけた夏の夜の運河の景色は美しい。とりわけ雨上がりの夜、青い洋燈を灯した夜釣りの船が出て行く頃、三菱倉庫のそびえるあたりの静かな波はペニスに似ている」
これは、横光利一の小説『家族会議』の冒頭の一節である。現在では想像もつかないが、昭和10年(1935年)頃はこんなだったのか。横光はこの小説で、兜町と北浜の対立をタテ軸に、東西の若い男女の恋愛をヨコ軸にした、新しいタイブの社会小説を書こうとした。
その内容は省略するが、要するに北浜の実力相場師が兜町全体を相手どり、当時の東京株式取引所の株式(新東)を売り崩そうと、大仕手戦を展開し、相場では勝利を収めたものの最後は怨まれて殺されてしまう。
明治期以来、株式取引のほとんどは先物取引で行われ、市場の勢力関係は兜町よりも北浜が優位に立つケースが多かった。先物取引といえば、そのルーツは大阪・堂島の米市場であるから、そのDNAの半分(あとの半分は関西商品取引所)を受け継いできた大阪証券取引所にしてみれば、現物取引では東証に大きく水をあけられても仕方ないが、先物取引(デリバティプ)だけは意地でも存在感を示したい、との思いがあるにちがいない。
かつて日経225先物を上場したのもその現われだが、さらに株式オプション取引でも東証をリードしたいという焦りから、アメリカのインターナショナル・セキュリティズ取引所了(ISE)との共同市場設立を計画した。ところが、凍傷がTOPlX先物などデリバティプ取引の売買システムを大幅増強すると決目たことで、大証の戦略に齟齬が生じた。
そこでISEとの提携を解消して、日経株価先物などデリバティプ取引のシステム開発を優先させることにした。株式オプション市場は新システムができてから対応すればよい、との発想なのであろう。
取引所に要求される機能は、なんといっても迅速かつ正確に売買注文を成立させ、公正な価格形成を保障することにある。その点で、東証はみそをつけている。今年に入って三度もデリバティプ取引のシステム障害を起こし、会長、社長を含む役員の処分(報酬カット)に追い込まれた。たしかに、大証のシステム・トラブルはいまのところみられない。その自信をもとに、さらに大容量のシステム開発に舵を切ったということだろ、う。
それにしても、今回のドタバタ決定劇を外からみていると、果たして大証に明確な長期ビジョンが有るのかどうか疑いたくなる。
(種二) |