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投機資金の適格性
沼野 龍男
 労働者の賃金レベルを計る資料の一つとして標準生計費という概念がある。地域別、世帯人員別、年齢別などの区分で、都道府県ほかで一定の計算法則で算出されている。雇用側の支払能力と労働者の手取り賃金額が生活レベル維持といかに折り争うかを示すことができる。また標準生計費を100として、150を愉楽生計費、60を生存生計費(生きていく限度)と指数化してもいる。自分たちの賃金レベルがどの程度かを一般的に知ることができ、労使の努力目標にも活用されている。
 標準生計費の中には衣食住、教育、通信、娯楽、嗜好など全てを網羅している。労働者世帯の年間数値はこれら統計で推測できるとして、60歳以上の人たちが余命25年と仮定して、85歳までにどの程度の可処分財産が必変なのであろうか。
 年金や雑所得も込みで年間220万円、85歳までに5500万円くらいが必要と推計される。さらに愉楽生計費のレベルなら8250万円と計算される。
 さて、先物取引に投入される資金は家族の福利を害さない、または生活の基盤を変えることのない範囲の資金(FIA編集の「先物取引コース」より)は、これらを超えると見通される余裕資金でなければならないだろう。換言すれば、投機資金としての適格性となる。さらに、実際に運用するについては、「出し切るべからず論」等を踏まえた上で、事業遂行と同様の感覚で取組むべしと先達は教えている。
 最近、パチンコ業界の人と話す機会があった。従来は1玉を4円で買い、出玉は1玉3円くらいで換金するものが大半であった。出たり入ったりしながら負ける場合は、1000円投入して概ね15分ぐらい遊べるらしい。つきがなければ、1時間で4000円負ける計算だ。ところが最近、1玉1円で買い、出玉は1玉50銭で換金する機械を設定している店舗があるとのこと。比較すると15分が1時間以上かかるので、全て磨っても十分パチンコをしたという遊技感覚は満たされるらしい。
 これを導入した店は金はないがパチンコは大好きな人たちへのサービスのつもりだったらしいが、台は連日満席、学生客も帰ってきて売り上げも決して小さくないとのこと。換金率は通常のもの(75%)より低い(50%〉にもかかわらずである。
 射幸心を追求する客と遊技の満足感を求める客の共存を計らずも実現した例であろう。この店には同業他社の見学申し込みが殺到しているとのこと。
 近時、先物市場にも「ミニ取引」なるものがあるが、これとは似て非なるものと思料する。川魚を投網で一網打尽にしたり、底引き綱で海底資源をさらい獲ったりすることには、ある種規制が必要だが、マグロやブリ、タイなどを1本釣りする漁法がそれらと混同されてはならない。
(週刊 先物ジャーナル 08年8月11日 951号 掲載)

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