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札幌高裁民事部判決(08年1月)に異議あり
沼野龍男
 取引員が立替払いした委託者の損金を請求した原審での判決を不服とした委託者が控訴し、逆転勝訴。取引員は証拠金の1500万円及びこれに対する平成19年7月31日(消費者契約法4条2項に基づき、本委託取引を遡って取消す旨の意思表示日〉以降支払済みまで年5分の割合による金員を支払えとした(判決文:月刊「先物経済界」08年7月号参照)。
 さて、勧誘から受託までの経過は平成17年11月頃からアプローチ。先物取引の仕組や相場変動によっては多額の損失を被るリスクがあることなど、外務員に課せられた説明義務は果たし、これに関する書類の交付にも手落ちはなかった。11月23費、見込み客自筆の口座開設申込書を受領。それには昭和18年生まれで64歳、先物取引は未経験だが、投資可能額は6000万円等が申告されていた。翌11月24日、営業管理担当課長が同見込み客に電話し、取引前の意思確認と先物取引に関する理解度につき再確認している。さらに同課長から「断定的判断の提供」に関して質問された際に「それはないさ、分かっている。そんなこと言ったらみんな買うベ。だってそんなことないの知っている」と回答し、自らの株式取引の経験に言及している。その後「先物取引の危険性を承知した上で、私の判断と責任において取引を行うことを承諾した」との文言が記載されている「約諾書及び通知書」に必要事項を記入し署名捺印した。
 担当外務員は情報提供を続け、約3週間後の12月12日、顧客から1500万円が振込まれ東京金先限200枚の買い建注文があり実行した。ところが12月13日、ストップ安で寄り付き、翌14日以降全玉手仕舞いする方針となり、最終的に委託者に3139万円の損(預かり証拠金を差し引いても「1639万円)が発性したもの。
 さて、取引所は需要曲線と供給曲線が交錯する時間的空間的場といえる。そこではたとえ1枚でも買い注文は価格を引き上げるエネルギーとして作用し、売りは逆に価格を引き下げる作用をする。基本契約たる「約諾書」等は、先物市場で買うか売るかを選択した契約ではない。売り買い何れにしろ、取引員に委託して先物市場での取引に参画する旨の契約である。
 控訴審判決の拠所は消費者契約法4条2項である。顧客の利益となる重要事項を告げた上で、当該重要事項等について顧客の不利益となる事実を故意に告げなかったことを要件とする。ならば基本契約締結そのものが、顧客にとって不利益であるか否かは勧誘時の説明義務違反がない限り、本件の如く否定されるものではない。
 本顧客は昭和18年生まれの男性で、少なくとも義務教育を受け、人生・社会経験も40年を超え、かつ投資可能額〈本人や家族の福利を害さない余裕資金)は6000万円と申告している。先物取引未経験者であったとしても、仕組や特性を十分理解して参画し、自己責任も十分負える資産運用に長けた人物と推測できる。
 この点、札幌高裁の判断は消費者契約はを安直に適用しすぎていないか。顧客側の後付の無理な理屈と、弱者である消費者対百戦錬磨のプロ取引員という対立構図が裁判官のレディネス(先入観・既成概念)をして見誤らせたとの印象が強い。極めて適憾である。
 本件外務員の勧誘から受託までの一連の外務行為は、外務員資格取得のテキスト通りと私は思料する。
(週刊 先物ジャーナル 08年7月7日 946号 掲載)

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