第 261回

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米良 周              
 1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)。近著(08年6月)「商品先物取引の手引き」(同友館刊)がある。

牛ドン(男性)から、うなドン(女性)客への目配りも
   
 6月17日、吉野家で牛ドン(並=380円)を食べていたら、2人連れのオバさんが入ってきていずれもうなドン(=580円)を注文した。店内に季節限定とポスターがあるが吉野家でうなドンとはと小さな発見。
 たまたま入った店の定員はオジさん。「さんしょ、ないわよ」、「はいはいすいません」。
 吉野家ファンの筆者にとって、オジさんとお兄ちゃんの店という印象があるが、牛ドン復活以降女性客が目立つようになってきたようだ。
 牛ドンを食べながらこんなことを考えた。
 消費生活の主導権だけでなく、家計の所得配分は一部を除き、女性に移行している。だとしたら、わが商品先物業界も、顧客層の中心(対面では50〜70歳代男性)を見直すべきなのではなかろうか。商品先物取引の縮小、為替証拠金取引の拡大、ミセス・ワタナベの儲け話(脱税を含めて)が伝わる為替と、女性客敬遠の商品先物の差によるところ大ではないのか。
 日本の商品先物の上場商品の中で、野菜、馬鈴薯はいまはなく、ブロイラーは休止、鶏卵、冷凍エビはさっぱり盛り上がらない。「営業力を集中しなければ生き残れないのだから、国際商品に傾斜するほかない」─だが、それは言い訳ではないのか。消費生活になじみの商品をテコに商品先物の楽しさを理解してもらう努力に欠けていたのではないのだろうか。
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 6月20日、東京商品取引員調査部会のセミナーを受講する。
 セミナーの内容要旨は別項で紹介したが、目、耳ともに劣化いちじるしい筆者の聞さ違いがあるかもしれ
ない。だが、日ごろの食料危機騒ぎはマスコミが増幅しているのではないか、とう思いに応えてくれた内容であると思う。小麦はまさに高値が供給を呼ぶを示現しつつあり、コメは「本来、需給について心配しなくてもいいところ、各国政府がしなくてもいいことをやった」(岩崎氏)、政策高騰の側面がある。
 大豆だってブラジル産はレアル高(07年秋対米ドルで2〜1.8、いま1.6−2.0%高)で手取りが少なくなるうえ、アルゼンチンはばらまき行政のとがが出ている。「輸出税は作付け時27.5%、作付け終了の07年11月35%へ、収穫時の08年3月44%、農民が出荷拒否に動くも道理」と需給外要因が危機的様相の背景にある。
 岩崎氏の分析、小麦は超高値収束(コメは政治的高値)、として、トウモロコシ、大豆粕の飼料としての側面をみると、穀物危機は食肉危機へ移っていく。「海外調達(買付け)から受け渡し(通関)まで4〜6カ月の時差がある」(岩崎氏)とすれば、日本で次に騒ぎとなるのは肉危機であるまいか。素人目にもわかるこの道筋。ヘッジ売買が活況化しようにもブロイラー先物はなく、鶏卵先物は著しく流動性を欠く。日本の商品先物市場は果たして、国民的視野で存在価値があるのだろうか。
岩崎セミナーを聞き終えての感想だった。
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 「原油価格のプレーイング・フィールド(競技場)は120〜130ドル?」価格体系の上方シフト{安い原油時代の終えん)⇒2000年以降、石油の需給構造が180度転換 ⇒「歪み」突いた投機マネーの流入。100ドルでも世界需要は拡大。
 丸紅経済研究所の柴田明夫氏の講演資料の一部(第一商品日本橋支店、6月21日開催)。
 前日、やや飲み過ぎ。二度寝のあげく、上京しての講演会はしんどかったのでパス。後日もらった資料の一部である。
 「OPECにとって満足のいく価格フロアープライム)は、旧バスケット価格で70ドル台半ば(WTlで80ドル台)」ともある。 3ケタ相場は「世界的な過剰流動性を背景とした投機マネーの活発化→先物市場の金融商品化(価格がオーバーシュート)→オイルマネー、資源国の外貨準備(SWF)、円キャリーなど3兆ドル」
 セミナーを開かずに資料の説明だけを書き写してみたが、筆者の見方、需給実勢は西暦末尾の数字にゼロを加える─08年は80ドルにどんぴしゃりの説明である。
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 26日、ニューヨーク原油140ドル突破。リビアの減産報道、OPECのヘリル議長の「数ヵ月内に170ドルありうべし」との発言などが手がかりとなっているが、投機退治熱がさら
に高まる形勢だ。
 「投機ではなくファンダメンタルズが値上がりの責めを負うべき」
 英紙ファイナンシャル・タイムス(25日付)のインサイト欄の見出し。筆者メリルリンチのグローバル・コモディティ・リサーチヘッドのフランシスコ・ブランチ氏。
 「国際金融市場では01年以降、デリバティブ手段が急膨張したが、商品はオーバー・ザ・カウンター・デリバティブの1.8%を占めるに過ぎない。国際経済に占める商品の価値は10%を超えるのにである。我々の見解では商品デリバティブの伸長は広範にわたる商品の生産拡張が求められているいま経済全般にとって寄与するところ大。商品デリバティブは供給者と消費者を価格リスクを交換する橋渡しの役割を果たすからだ」
 「商品インデックス投資が現物価格を押し上げているという証拠も乏しい。石炭、コメ、鉄鉱石、鋼材などはインデックス対象外だが、インデックス商品より値上がり幅は大きい。オレンジジュース、プラチナ、すずなどS&PGSClから除外されたあと値上がりが加速している。インデックス投資・投機家は現物需給を変えるわけではない。原油なりトウモロコシを実態経済から切り離すわけでもない」
 で、なにが高値を、についてブランチ氏は説く。
 「米消費者物価上昇率4.2%、FFレート2%、米金利はネガティブの域に入っている。30年前、我々は実質金利がわずかでも下がれば、現物商品価格は急上昇した体験を持つ。要するに金融綾和が最近商品上昇の背景であり、投機ではないと判断する」
 「チューリップ球根、ドットコム株、住宅といったかってのバブルと異なり、商品は値上がり期待で保有されてはいない。商品は途上国でただちに消費される。増産と実質金利高だけが問題解決に資する」
 なるほど、なるほど─筆者の読後感である。

 (週刊 先物ジャーナル 08年6月30日 第945号 掲載)